豹変系男子WEEK【ぱん専用】台本


***
 

(トントントンと包丁の音)

トースト焼けたよー。
そっちは?野菜切り終わった?
じゃあ俺、ドレッシング用意するよ。

【その時、彼女は小さな声で「いたっ」と声を漏らす】

ん?どうした?
なんか声が聞こえたけど、って、包丁で指怪我してんじゃん!
もしかして俺が後ろから声掛けたせい?
大した怪我じゃないって?いやいや傷口からバイキンが入ったらどうすんだよ。
ほらそこに座って。

(ガサゴソ何かを探す音)  
えーっと、確かこの辺に…………あ、絆創膏あった。
ちょっと待ってよー…………よし、綺麗に貼れたぞ。
とりあえずお前はもう席に座ってて、後は俺が朝食の準備するから。


【「大丈夫だから私も手伝うよ」】


いいから座っててよ。あとは盛り付けだけだろ?
え?その間に洗濯物干してくる?
いいっていいって、ゆっくりしてなよ。
今日俺は仕事休みだしさ、家の事は任せとけって。

(カチャカチャと料理を盛り付ける音)

大事な彼女の為なら、家事も楽しいんだよなぁ。
それになんかさ、お前には楽をさせたくなっちゃう。
えー?そりゃ好きな女には、苦労かけたくないじゃん。
とにかく、大切にしたいの!分かった?

(皿をテーブルに並べながら)さー出来た出来た。
よし食べよう、いただきまーす!

(食事をしながら)最近、仕事どう?
なんか見てるとさ、毎日残業でくたくたじゃん?大丈夫?
あんまり頑張りすぎんなよ。
お前は、手を抜くって事を知らないから、心配になるよ。
うん……
うん……
昇給が掛かってるから、つい張り切っちゃうって事?
そっかぁ、まぁお金も大事かもしれないけどさ、ちゃんと自分の事も大事にしろよ。
俺は豊かな生活とかよりもさ、お前が笑顔でいてくれる方が、何倍も嬉しいから。


【彼女は嬉しそうにほほえみ、トーストをかじりながら時計を見る。
そして慌てて立ち上がった】


(ガタンと立ち上がる音)
えっ、どうした?いきなり立ち上がって。
あ、そんなに時間やばいの?!
うん、分かった、いってらっしゃい。
今日も遅いの?
そっかぁ。
あ……いや、寂しいなって思って。
ってかごめんな、仕事に行く前にこんな駄々っ子みたいな話して。
なぁ……行く前に一回だけぎゅーしていい?

【そう言って彼は、玄関で彼女を強く抱きしめた】

ぎゅー。
好きだよ、大好き。
じゃあ、気をつけて行ってきて。
夕飯、腕によりをかけて作って待ってるから。
うん、じゃあな。

(バタバタ走る音とドアがバタンと閉まる音)

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(声を冷たくして)はぁ、やっと行ったか。


【彼はタバコを取り出し、火をつけて吸い始める。
その顔からは、先程の誠実さは無くなっていた】


ちょっとご機嫌とってればにこにこ働くから、扱いやすい高給取りの鴨だよなーアイツって。
どんどん残業して昇給してくださいって感じだよ。
金がお前の価値なんだからさ、ははっ。
こんないいマンションに転がり込めるなら、いくらでも聞き心地のいい言葉を吐いてやるっつーの。

さーてと、アイツどうせ今日も残業で遅いだろうし、セフレでも呼ぶかなぁ。
あ、ゴムも買ってこさせよう。
数の減り方でバレたら大変だしなぁ。

(スマホをタップする音、通話呼出音)


【彼はある女性を呼び出すが、残念な事に電話はつながらなかった】


んだよ、なんで出ねーんだよ、使えねぇなぁセフレ1号。
ったく、俺からの電話はすぐに出ろっていつも言ってんのに。
仕方ねぇな、今日は2号にしとくか。

(スマホをタップする音、通話呼出音)

あ、出た。
お前今、何してんの?
は?バイトに行く所?
あっそ、まぁいいや。今から来いよ。
いや、バイトと俺とどっちが大事な訳?
当然、俺だよな?
来なかったら、もう二度とお前とは会ってやらないよ。
お前とはここで関係を切るからな。

はは、何泣きそうな声になってんの?
そうだよなぁ、お前は俺無しじゃ生きていけなーいとか言ってたもんなぁ?
で、どうすんの?
俺は別にどっちでもいいけどー?

へぇ、バイト先には「風邪をひいた」って事にして、こっちに来るんだ?
ははっ、いい子いい子。
あ、ゴム忘れずに買ってこいよ。
じゃあ、待ってるからな。

【彼は通話を切り、大きなため息をつく。そして小さく笑った】

ははっ、女ってマジでちょろいわ。

END

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