『ねぇ、敦。』
「何?雨ちん。」
気だるそうな声は変わらず、変声期を迎えても残っていてなんとも言えない色っぽさが出た幼馴染み。
サラサラな紫の髪に眠そうな二重の目。
控えめに言ってもやはり彼はかっこいい。
『大好き。』
「オレも好きー。」
この言葉にはお互い違う意味を含んでいることは容易に想像がつく。
どんなに言葉にしても、どんなに抱きしめてみても、彼は私を1人の女としてみてくれることはほぼないだろう。
「は?お前、まだ付き合えてねぇの?」
『うるさい、灰崎。』
「俺が敦に言ってきてやろーか?」
『いい。』
「即答かよ。」
もし恋愛感情を敦が知って、その相手が私じゃなければ。
そう考えると絶対に言えない。
『いいの。いつまででも待つから。』
健気なヒロインを気取るつもりはない。
もちろん、彼に好きな人が出来て、それが私以外の誰かなら、応援もするし、協力もするだろう。
だが二度と彼と会うことほなくなる。
彼が幸せならばいいなんて大きな器を持てる人間ではないからだ。
「変な奴だなお前。」
クラスメイトの灰崎祥吾に鼻で笑われながら、窓の外を見ればちょうど敦のクラスが外で体育をしている。
敦以外の人の名前はまだ全く覚えていないが、男バスの人も何人かいるみたいだ。
種目は走り高跳び。
敦にとって平均的な高さはウォーミングアップにしかならない。
普通の男子よりも長い髪が揺れながら、バーを軽く超える。
『めっちゃかっこいい…。』
ふと、飛び終わった敦がこちらを向く。
あ、目が合った。
ヘラヘラと笑いながら手を振ってきたので、私も返すように小さく手を振り返すと横で大きな咳払いが聞こえる。
「今はなんの授業だ。雨宮。」
『ぅ、あ、国語です。。。』
毎度のことに呆れたのか今度はため息をつく国語の教師。
「また紫原か。お前も懲りないやつだな。」
『気をつけます。』
「あんまりひどいと白金監督に言いつけるぞ。」
『いや!それはやめてください!』
「じゃあ真面目にやれ。」
先生が持っていた教科書で軽く頭を叩いてきた瞬間、どっとクラスメイトの笑いが起きる。
声を我慢するように前で笑う灰崎を睨みながら、少し痛い頭をなでた。
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