張飛
「なあ、本当に俺でいいのか?」
ああ、荒くれ者の俺が誰かと家庭を作るなんざ、あの頃は考えもしなかった。
「何を今更。戦場での勇ましさはどこへ行ったのやら」
祝言をあげる前の晩だった。いつもの酒も進まないほどに調子が狂っちまっていたんだな。
だけどあいつ、いちこは少しも揺るがなかった。
「正直、義兄上以外で貴方のそばにいられるのは私くらいしかいないかと」
当然力じゃ俺に勝てやしないが、いちこの度量や器量じゃ俺は足元にも及ばねえ。強い女だ。
弱気になる俺のけつを静かに蹴飛ばしやがるんだ。
「お前にゃ勝てねえな」
こんな嫁と家庭を作れて、俺ぁ幸せもんだってな。本当にそう思うぜ。
「もう今日の酒は没収ね」
「いちこ…じゃなかった星彩!あと一杯だけだ、な!」
「これ以上は引けない。お終いはお終い。
…それと母上と間違うのはやめて」
昔を思い出しながらしんみり飲んでいたんだが、星彩に見つかっちまった。心残りだが、星彩が言うんだから仕方ねえ。
あいつもいちこに似て来た。冷静さとかな。あと口調もそっくりだ。
「星彩に叱られるなんて…しっかりしてもらわないと」
「いやあ声まで似てやがるなあ」
「話をそらさないで下さい」
星彩と入れ違いでいちこが入って来た。
厳しい言い方するくせに、気遣いはしっかりしてるんだよな。
あいつが持って来た白湯を受け取った。
「兄上。兄上も父上を見張って。正直私だけでは注意しきれない」
「お、おう…ていうか俺は鍛錬、」
「私だって鍛錬がある。それ以前の問題で、体に気をつけないと鍛錬も水の泡。
父上はそこが管理出来て無いから私たちで何とかしなくては駄目」
「おいおい、喧嘩すんじゃねえ!」
「誰のことについて話しているとお思いで?」
「は、ははは…そうだな…」
みんな家族思いなんだよな。
本当に、俺は良い家族に恵まれたぜ。
君と歩む
ずっと守って行きてえな
22
- : -
: 90+1
.