パーマをかけてみた。属に言うゆる巻きというやつだ。ゆる巻きに似合うような服を着て、今日も図書館へと足を運ぶ。
入るなり彼はにこっと微笑んでくれた。彼の笑顔は甘いマスクという表現がピッタリな気がする。そのぐらい綺麗な顔。
「こんにちは」
「こんにちは」
「パーマ、かけられたんですね」
「はい。気分転換に」
「よくお似合いです」
「あ、ありがとうございます…」
そんな風に微笑まれながら言われてしまうと社交辞令と分かっていても照れる。
この人は、きっとモテるだろう。七人の彼女がいて日替わりで…だったりして。そんな下世話なことを考えていると、彼は首を捻って不思議そうな顔をした。
「どうかされました?」
「いえ…」
「そうだ。新作がありますよ」
「本当ですか?借りれます?」
「はい。取り置いてあります」
にこっと笑って新しい本を手渡された。私のためにわざわざ取り置いておいた、だなんて。どういう意味かしらね。甘い声と甘い笑顔。嫌でも意識させられる。
なるほど。こうしてこの人は七人の彼女を作って…なんてね。彼は優しいだけ。照星さんはそんなことしない。きっと心から愛したかわいい彼女がいるはずだ。
失礼な妄想をしたことを心で詫びて、真新しい本を借りる手続きをしてもらう。髪がゆらゆらと揺れて、邪魔だったから片耳にかけて図書館のカードを探した。すると、照星さんはじいっと見てきた。
「あの、なにか…」
「いえ。ありましたか?」
「はい。お願いします…」
「返却期限は二週間です」
「ふふ。明日、来ますよ」
「…それは嬉しいですね」
「え?」
「いえ。はい、どうぞ?」
にっこりと笑って手渡された本を鞄にしまう。びっくりした。一瞬、期待した。私に明日も会いたいから、だなんて期待をさせないでほしい。きっと照星さんは単純に新作を早く返してほしいだけだ。我ながらおめでたい。照星さんほどの素敵な人が私を好きになるはずないのに。
情けない気持ちで彼に会釈をして帰ろうとすると、にっこりと笑って言われた。
「今日はワンピースですか」
「…おかしいでしょうか?」
「いえ。とても可愛いです」
「か、かわいい…っ!?」
「どうしたんです?赤い顔をして」
にこにこと笑う照星さんの顔を直視できなかった。ストレートに誉めないで…!
かあっと熱くなった顔を誤魔化すように私は頭を深々と下げて、お礼を言った。
「あ、ありがとうございます」
「スカート、好きなんですよ」
「そ、そうなんですか…」
「ええ。興奮しますから」
「…はい?」
「もちろん、そういう意味で」
「は、は…」
おかしなことを言われたような気がしたけど、照星さんは顔色ひとつ変えない。
えっと、女の子らしい服が好きとかそういう意味なのかな。まさか、脚が見える服が好きだなんて、そんな、まさか…。というか、空耳な気さえしてきた。彼は本当に表情をまったく崩さないからだ。きっと私が失礼な妄想をしたから、おかしなことを言われたような気がしただけだろう。彼がそんなこと言うはずない。
家に帰って、本を予定通り読み終えた。明日は仕事だからスーツで図書館へ行くことになる。パンツにしようかスカートにしようか。スカート好きらしいし…。
少し、彼のことを意識している自分に気付いて驚いた。まるで恋してるみたい。こんなことを考えているから変な空耳が聞こえるんだ。やめよ。明日はパンツ。
私は馬鹿ね。失礼な妄想も甚だしいわ。
興奮しますね、もちろんそういう意味で。
…やっぱり明日スカートにしようかな。
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