私の恋人は司書だ。普段は図書館のカウンターで涼しい顔をしながら業務をこなしているくせに、まったく何の恥じらいもなく奇妙なことを言ってきたのをきっかけにお付き合いすることになって今に至る。
彼は怒った時も涼しい顔をしているように見える。だけど、それはそれで怖いものがある。蔑むような目で見つめられることが辛くなった私は頭を下げた。


「何もありませんでしたが、すみませんでした!」

「どんな謝罪だ」

「いや、だって何もなかったもん」

「覚えてないくせにか」

「覚えてないけど、何もなかった」

「意味が分からん」


墓まで持ち込むはずの秘密が思わぬ形で露呈した。なんと、あの取引先の彼女予備軍が照星さんと同じ職場にいたというのだから世の中狭いとしか言いようがない。愚痴という形で照星さんの耳に入ってしまった不運と、あの図書館を利用し過ぎて私の顔を他の司書にも覚えられてしまっていたという不運の連鎖反応。正直、笑うしかない。
お前、脚を切断するぞ?という目をした恋人をどう対処しようか考えていたら、照星さんは溜め息を吐いた。それも、この世の終わりのような顔をして。


「正直、私も何もなかったと信じたい。互いに覚えていないのなら、問いただしようもないしな」

「そうそう。不問に処すってことで…」

「だが!生脚で帰宅したということは、脚を撫で回された可能性があるということだ!なまえのこの脚を!私の脚を!」

「はい出たー。脚フェチ出たー」


何よ、私の脚って。気持ち悪い。
照星さんは私の貞操よりも脚の心配ですか。嫉妬の矛先は脚ですか。頭おかしいんじゃないの。いや、おかしいのは知ってたけど。


「前々から聞きたかったんだけどさ、私が太って脚がぶくぶくになったらどうする?」

「絞る。安心しろ、食事から運動まで全て管理してやる」

「…じゃあさ、私よりも好みの脚の女性が現れたらどうする?」

「あり得ない」

「もしもよ。もーしーもー」

「別に…私は確かに脚が好きだが、それだけで女を好きになるわけではない」


と、いいことを言った風な顔をしながら脚に頬ずりをしてこられた。ドヤ顔で言う割に行動が煩悩剥き出しなんですけど。本当、残念イケメンめ。
でも、そっか。照星さんは私のことをちゃんと見てくれていたんだ。

脚99.99%
その他0.01%

の愛情配分かと思ってた。嬉しいような、そうでもないような、複雑な気分。脚が大大大好きなのは事実なわけだし。
何はともあれ、うまいこと浮気騒動を誤魔化せたと思って安心していると、照星さんはスカートの中に顔を埋めようとしてきた。慌てて脚で顔を挟んで抵抗する。


「言っておくが、それは私をより興奮させるだけだぞ」

「変態!」

「ほぉ?酒を飲んで脚を見せびらかした上、男と一夜を共にしたなまえが私を罵ろうとは…いい度胸じゃないか」

「ふ、不問ってことになったじゃない!」

「私は一言も許すとは言っていない」

「変態な上に心が狭い!」

「まだ言うか…仕方ない、お仕置きしてあげましょう」


脚よりココの方がずっと好きだ、と下着を剥ぎ取られ、私は照星さんにお仕置きされた。いや、「お仕置き」というにはあまりに気持ちよく、溶けそうな行為だった。彼の乱れた呼吸を聞くと身体が疼く。
結局のところ、私も彼もどうしようもなくエロアホい人間であり、お似合いということなのだろう。仕方がない、見た目とのギャップがあり過ぎる恋人の為にこれからも適度に運動して今の体型を保とう。その代わり、私以外の脚に見惚れたりしたら許さないんだから。私が指を突き立てて照星さんに言うと、彼はその指を握りながら穏やかに笑った。
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