「なまえちゃん食堂行こう!」
「うん」


良からぬ噂やあらぬ疑いをかけられ色々あり、グラン・ユーフォリアも成功へと終わりやっと普通の日常生活に戻った私とひかりちゃん。各ユニットに怯むことなくぶち当たっていったひかりちゃんのことは師匠と讃えたいくらいすごいと思う。私一人だったら絶対いやだ逃げてる、実際隣で見ててヒヤヒヤしっぱなしだった。


「今日はカレーの日なんだ?」
「あっ、」
「じゃあ俺もカレーにしようかな」


突然うしろから声をかけられて受け取ろうとしていたお盆を落とすところだった危ない。声をかけた人物は森重優那。なぜか二年からこの学園に入ってきた不思議な人。そしてこれまた不思議なことに私がいるところによく現れる。


「私向こうで食べようかな〜」
「えっ、待ってよひかりちゃん」
「おーい特待生!ここ空いてるよ!」
「いま行きます!」
「待っ、!」
「じゃあ俺らはあっちで食べようか」
「・・・なんで一緒に食べること決定なんですか」


私の言葉に返事することもなくただ優しく微笑んだかと思えば腕を掴まれてぐいぐいとひかりちゃんたちが座っている所よりも遠いところに座らされてしまった。くそう!逃げ場を失った!諦めるしかなく目の前のカレーを黙々と食べるも前からこれでもかというくらいの視線を感じる。睨まれてるのかな、何も喋らないから怒っちゃったのかな。正直森重先輩とはこうやって無理やり、話す機会を作られるけれどちゃんと目を見て話したことがない、気まずい。


「た、食べないんですか」
「一生懸命咀嚼してるなまえちゃんが可愛いから見てた」
「へ、へんたいだ!」
「ははっ、ありがとう」
「褒めてないです!!?
森重先輩ってそんなキャラでしたっけ?!」


面倒見が良くて優しい先輩なんだとあの一件で感じることはあった、のにまさか変態だったとは!そんなに見ないでください!カレーってこんな味だったっけ、あれ何だろう甘いのかな辛いのかな、味覚を奪われてしまった!それならいっそのこと視覚まで奪ってくださいよう!もう嫌だよこのイケメン目の前にカレー食べたくないよう!


「そうだ、俺ねなまえちゃんに聞きたいことがあったんだ」
「なんで、しょう」
「この間校門付近で会ってたスーツ着た男の人・・・・・あれ、誰?」


笑ってるはずなのに目が全然笑ってないぞ、むしろ据わっている。言わないとどうなるか分かってるよな。って聞こえてくる。お、思い出そう、この間、校門付近、スーツの男性、ん?んん?そんな時あったっけ、スーツ・・・・ちょ、ま、目の前の森重先輩の足揺れて、なんで!?なんでそんなイライラしてるの待って待ってテーブル揺れる!!


「あぅ、あっ!お、お兄ちゃん!スーツ、お兄ちゃんです!!」
「お兄ちゃん?」
「はい!お兄ちゃんです!
久しぶりにお休み取れたからって会いに来てくれて!」
「兄がいたのか、初耳だな」


揺れていた足が止まった。
たしかあの日、平日だったけど急にお休みになったから放課後ちょっと会わないかと言われて会いに行ったんだ。でもなんでそれをこの人が知っているんだ、まあ放課後だし、人目にはつくけど、


「スーツってことはサラリーマン?」
「い、いえ、」
「ん?」
「あのー、えっと、お巡りさんです」
「お巡りさんって言い方がもうかわいい
(へぇ、そうなんだかっこいい義兄さんだね)」
「・・・多分ですけど、心の声と逆ですよね」


おい笑って誤魔化すな。そして何もなかったかのようにカレーを食べ始めるな。あと心の声だろうが何だろうが私のお兄ちゃんのことを義兄さんと勝手に呼ばないでください。義理の兄弟になってないです。


「俺も今度話してみたいな」
「法を犯せば話せるんじゃないですかね」
「それ多分事情聴取でだよね」
「・・・・ごめんなさい」
「怒ってないよ」


笑顔が怖すぎるもう嫌だよ助けてお兄ちゃん。