城内に入り、ただ暗闇だけが広がる中を4人は進んでいた。

 そこに突然天井がひらけ、亜空間のような切れ目から眩い光と共にブルーアイズが頭を覗かせる。
「ブルーアイズ!」
 なまえが一目散に駆け寄ると、そこに海馬とモクバが飛び降りた。

「海馬! モクバ! 無事だったのか!」
 遊戯もそれを見て駆け寄った。だが海馬はまず目の前に立つなまえを、まるで品定めするかのような目で見る。

「なんだその格好は。」

「は? え、…………ハッ!」
 忘れていた。それなりに露出度の高い格好だということを。なまえは突然張り詰めていた緊張感を崩して我に返り、しゃがみ込むなりマントで体を覆った。
「ち、違うの! 好きでこんな格好してるわけじゃ……」
「フン、べつに悪くはない。」
「はァ?! 趣味悪いんじゃないの?!」
 涙目であたふたするなまえを、舞がニヤニヤ笑って眺めている。城之内も恥ずかしいような気まずいような顔で頭を掻いているが、遊戯だけはふてくされた様に口を曲げていた。

「そこの負け犬衣装よりはマシだ。」
「ンだとテメェ! 誰のおかげで……!」
 話を逸らすように海馬が城之内をあしらうと、城之内の反論より先に地の底から男達の笑い声が響きはじめた。
 警戒するようになまえも立ち上がると、海馬以外の5人は辺りを見回す。だが海馬だけはしっかりと前を見据え堂々としていた。

「フフフ…… よくぞここまで来たな。」

「フッ… オレを生け贄にする事は失敗した!」
「海馬瀬人! ……な、なぜここに!」
 ビッグ5の笑い声は途切れ、1人の声が狼狽える。
「これで“ファイブ・ゴッド・ドラゴン”が復活する事はない! このゲームはここでクリアだ!」

 だがその海馬の強気な声に、ビッグ5の声がハイそうですと応えるはずもなかった。1人の声が喉の奥で笑うと、城内の石柱が並ぶ空間は電子板に挟まれたようなフィールドへと変化した。
「なに?!」

「そうはさせませんよ」
「その通り!」

 突然のフィールド変化に驚く中で、さらに驚くべき事が目の前に広がった。
 ビッグ5ら自らが生け贄となり、その5つの首をもつドラゴンは遊戯達の前に召喚されたのだ。
「ちょっと! 儀式魔法が必要なはずよ!」

「そんなもの、私たちが開発したゲーム世界で守る必要があるとでも思っていたのか!」
 ドラゴンの首のひとつがそう答えた。ビッグ5はまさに一心同体となって海馬に立ちはだかる。なまえが険しい顔でデッキの残数を視界にとらえる中で、舞が先手を取ろうとした。

 だが召喚したハーピィ・レディースは動きが止められ、飛行モンスターである彼女達ですら地面に伏した。
「フフフ……愚かな! お前達の足元を見るがいい!」

「…! これは、“ロード・オブ・ドラゴン”!」
 遊戯が言う通り、フィールドにはロード・オブ・ドラゴンが浮かび上がっていた。ビッグ5がこれから言わんとしていることをその場の全員が悟る。

「そう! ここはドラゴンの聖域。ドラゴン族以外のモンスターが闘うことは出来ないのです! ……おや、クイーンは顔色が悪いようですねぇ。」

 遊戯がハッとしてなまえを見ると、確かになまえは青ざめた顔を顰めていた。まさかと思う中で、ビッグ5は勝ち誇ったようにさらに笑い合う。
「そう! みょうじなまえはドラゴン族1枚持っていない! ハハハ、傑作じゃないか! デュエルクイーンが今ではただのお荷物ときた!」
 薄い皮膚に食い込むほどなまえは唇を噛んだ。ゲーム世界で血が流れることはないが、それでもデュエルディスクに触れる手は震える。

「フフフ…… ハハハハハハッ!」

 突然高らかに笑い出す海馬に、なまえは驚いて振り向く。
「ドラゴン族でオレと勝負すると言うのか。ならばなまえの手助けなど端から不要! 貴様らのその意気込みだけ褒めてやる!」

「海馬……」

「いでよ! “青眼の白龍ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン”!」
 海馬はなまえが何か言うのを遮るように、ブルーアイズを召喚した。
「おっしゃあオレもいくぜ! “レッドアイズ”!」
 続くように城之内がレッドアイズを、舞が“ハーピィズ・ペット・ドラゴン”、遊戯が“カース・オブ・ドラゴン”をそれぞれ召喚する。ファイブ・ゴッド・ドラゴンの前には、4体のドラゴンが並んだ。

青眼の白龍ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン”(攻/3000 守/2500)
真紅眼の黒龍レッドアイズ・ブラック・ドラゴン”(攻/2400 守/2000)
“ハーピィズ・ペット・ドラゴン”(攻/2000 守/2500)
“カース・オブ・ドラゴン”(攻/2000 守/1500)

「「「いくぜ!」」」いくわよ!」

 一斉に攻撃を向けたところで、ファイブ・ゴッド・ドラゴンの4つの首も応戦するとこの攻撃はかき消されてしまう。あの5つの首がそれぞれに独立していると分かったときには、ビッグ5の笑い声はすでに狙いを定めていた。
「フフフフフ…… まだ一体こちらの攻撃が残っているぞ!」
「まずは見せしめだ!」

 視線の先に、4人が背中に庇っていたなまえとモクバが映っている。どちらを選ぶにせよ2人に壁モンスターはいない。だがビッグ5は非情にもモクバを選んだ。

「ハハハハハハ! 消えろ、モクバ!!!」


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