「なまえのブラック・マジシャン!」

 ブラック・マジシャン(攻/2500 守/2100)

 遊戯のとは色の違う、同じ名を冠した最高位の魔術師が再び対面する。互いにマスターを守るように、牽制しあう素振りを見せた。
「だがオレのブラック・マジシャンの方が攻撃力は上だぜ。」

「フ…私の伏せカードは魔法カード“魔法解除”!遊戯のブラック・マジシャンから“魔術の呪文書”を破壊する!」
「…!」
「まずはディアールとブラック・マジシャンで、カースオブドラゴンと暗黒騎士ガイアを攻撃!」

 遊戯 LP:700

 遊戯のライフが再びなまえのライフを下回る。観覧席の城之内達がかける言葉も、今はなまえと遊戯には届いていなかった。

「さすがだぜ…なまえ、まさかまたブラック・マジシャン同士で闘う事になるとはな」

 しかし遊戯は、なまえの表情が少し硬いように感じていた。それが何を意味しているのか…遊戯には引っかかる。

「(これでフィールドにいるのは全て攻撃力2500の魔法使い族…魔法カードでのテクニカルな戦いに持ち込まれてしまった。明らかになまえの優位だが、…なぜなまえはまだあんな表情を…)」

 遊戯はそこで、ふとなまえの背後に立つ大きな白い塔…フィールド魔法、魔導書院ラメイソンが目に入った。そして気付いてしまったのだ。


 なまえのこれまでのターンで使って来た“魔導書”の数が、あまりにも少ないという事に。


「(でも何故だ?なまえのデッキは全て“魔導書”シリーズで構築されていると海馬が言っていた…これまでドローした枚数と手札を考えれば、もっと魔導書シリーズのカードが使われているはず。いま実際に使ってきた魔導書の数が、このデュエリスト・キングダムでの闘いで見てきた数より明らかに少ない。…あまりにも不自然だ…!)」

 なまえは遊戯の目の機微に反応していた。それが自分の“魔導書”デッキに疑問を抱いているものだという事にも気付いている。千年秤のウジャド眼がチラリと光るたび、なまえはただ心を鎮める事に尽力しポーカーフェイスを保つ。

 ターンエンドの宣言後、遊戯はカードを引いた。

「オレはカードを1枚伏せてターンエンドだ。」

「私のターン、カードをさらに1枚伏せるわ。…終了よ。」
 なまえはカードのドローとリバースだけでエンド宣言をする。

「オレのターン、ドロー!」
 遊戯は手札に揃った魔法カードを見回して(よし!)と決意し、手を掛けた。

「行くぜなまえ!オレは手札から“死のマジックボックス”を発動!魔導鬼士ディアールを破壊するぜ」

 黒い箱にブラック・マジシャンが入り蓋が閉められると、同様の箱にディアールが引き込まれていく。ブラック・マジシャンの方の箱にナイフが刺さり、その蓋が開けられると無惨に串刺しにされたディアールが現れた。そしてディアールを取り込んだ方の箱から、ブラック・マジシャンがなまえの目の前に飛び出して見せる。

「待ってたわよ、遊戯のブラック・マジシャン…!」

 ディアールを犠牲にしてしまったが、なまえは臆する事なく、自分のフィールドへ足を踏み入れた遊戯のブラック・マジシャンの目を見て不敵に笑ってみせた。遊戯がそれを見て本能的に「しまった…!」と口をつく頃には、なまえの伏せカードが開かれる。

「罠カード“マジシャンズ・セレクト”!バトルを終了させて、相手フィールドの最も攻撃力の低いモンスターを破壊する!遊戯にはブラック・マジシャンしかいない!!!」

「甘いぜなまえ!伏せカードオープン!魔法カード“ハンマー・シュート”!フィールドで最も攻撃力の高いモンスターを破壊する!オレのブラック・マジシャンが破壊された事で、このカード効果で破壊されるのはなまえのブラック・マジシャン!」
 互いのブラック・マジシャンは破壊され、フィールドは真っさらな状態へ戻される。それでも三体いたモンスターは全てカード効果で破壊されたため、遊戯となまえのライフの変動はなかった。

「フ、流石だぜ。ブラック・マジシャンが相手でも、デュエルになったら容赦無く攻撃する。クイーンは名ばかりじゃないってわけだ。」
「あら、褒め言葉として受け取っておくわ。それでも…私がこんなに本気で闘ってまだ倒れないなんて、遊戯が初めてよ。」

「(本気?それはどうかな…)」
 遊戯はジッとなまえを見つめた。仮面を貼り付けたようななまえの顔から、その中に潜む感情を探るように。

「オレはもう一枚の伏せカードを使うぜ。」

 遊戯はこのカードでそのデッキに感じた不自然さを確認しようとした。この1枚で判る──そう確信していたのだ。

「罠カード“徴兵令”!相手のデッキの1番上のカードを巡り、それがモンスターカードだった時オレのフィールドに召喚し、モンスターカード意外だった場合は相手の手札に加えられる!」
「(…!まさか、私のデッキ内容をこれで確かめるつもり?!)」
 遊戯の目に映るなまえの顔色が、やっと変わった。


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