「ふーん、音、なぁ」
「そうじゃ。毎夜毎夜、叩かれるような音が聞こえるんじゃ」
銀髪の名前は仁王雅治。3年B組所属でテニス部に入っているらしい。
そんな彼、仁王は指輪を拾った日以降、夜、何かの音が聞こえるとのことだ。そして景色が自分の後ろに飛んでいく夢。その景色の先にはいつも黒髪の女が居るらしい。指輪は拾った場所に何度も返しに行ったらしいが、数日経つと自室の机上に戻ってくるようだ。
「てかその女って…」
「何じゃ?」
「うちがさっき視た女やろな」
「ええ!?さっき居たのか!」
「今はおらんけどな。うちが長時間傍におるからやろ」
「土御門さんが傍におったら女は来んのか?」
「うちがおるからというか…うちが数珠を持ってるからやろな」
そう言って、ポケットから数珠を取り出す。
紫苑の数珠は携帯しやすくするため二輪ではなく一輪数珠を持っている。本来正式な数珠は108個の珠を繋ぐが、紫苑のような数珠は48個の珠が繋がれている。
「…これ、一応貸したるわ」
「えっ!?」
「もしもの為や。何もないことを祈っとるけど」
「……」
仁王は恐ろしいことを言わないでくれというような表情をしている。
カラン、とスプーンと器がぶつかって音を生み出す。パフェを淡々と完食した紫苑は立ち上がった。
「ほんなら行くか」
「どこに?」
「決まっとうやん。アンタん家や」
「へ…」
「今日は泊まんで。その音って夜にしか聞こえへんねんやろ?」
早よ支払いやぁ、と紫苑は呟いて一足先にカフェから出る。仁王は暫くボーっとしていたが慌てて料金を支払って紫苑の後を追った。
「ちょ、ちょォ待ちんしゃい!泊まるってどういうことさね!」
「言葉のまんまやで。あ、着替え取ってこな。あと塩とかも要るな」
「俺にかて家族が居るんじゃ!そんな急に…」
「じゃあ何なん。アンタ死にたいん」
突然発せられた“死”に仁王は詰まる。紫苑は足を止めて仁王を見据えた。
「アンタが思てるほどこの女は優しないで。ホンマに除霊したいんならさっさとやらな」
先程とは打って変わって真面目な表情の紫苑に、仁王は息を呑んだ。貰った数珠を握りしめる。
「ほな行くで」
「…おう」