裏々
「は?消えた?」
「引きこまれたって感じだったっす…」
校舎裏には赤也に柳、跡部、芥川が集まっていた。今にも泣き出しそうな赤也を宥め、柳は詳しい説明を求める。
「水溜まりから手が出て…紫苑先輩の足を引っ張って水溜まりの中に引きこんだんすよ!そんでそのすぐ後に仁王先輩も引きこまれて…」
「仁王までやられたのか」
跡部は意外そうに言う。そんな彼に柳は「仁王も多少霊感があるらしい。おそらく“釣られ”たんだろう」と答えた。
その場には鏡が取り残されている。彼女たちの件もあり、皆は水溜まりは避けている。しかしながら原因がこの鏡にあるのならそれに触るのも危ないだろう。文字通り、彼らは何もできないでいた。
そんな中「あ、居た居た」と男子の声が聞こえた。
「日吉?」
「幽霊の件、解決したんですか?したんなら早く戻ってきてほしいんですけど」
突然の彼の登場に皆驚いたのだが、跡部は閃いたとばかり顔を輝かせた。そして彼をこっちに呼び寄せた。
「何ですか」
「日吉、お前鏡が関わる霊の話とか知らねえか?」
「鏡?」
突然何だと言わんばかりに日吉は眉をひそめる。だが地面に置かれた鏡を見つけ、今度は違う意味で眉をひそめた。紫苑や仁王が居ないことが気になりつつも、彼は頭をフル回転させる。
「これは幽霊とかじゃないんですけど…」
「ああ」
「“雲外鏡”っていう妖怪なら知ってますよ」
「うんがいきょう?」
芥川は訝し気に反芻する。その目はいつもの眠たげなそれではなく、紫苑たちの身を案じているものだった。
えーと、と日吉は頑張って記憶の引き出しを開ける。
「確か魔物の正体を明らかにするといわれている伝説上の鏡で、百年を経た鏡が妖怪と化した付喪神であり、妖怪となった自分自身の顔を鏡面に映し出しているもの、または照魔鏡に映された妖怪たちが照魔鏡を操って動かしているもの…だとか」
「うーん、つまり悪い妖怪ってことか?」
理解が追いつかないので赤也はじれったそうに言う。
「あー…それはケースバイケースじゃないのか?」
「ま、そうだな。して日吉、土御門さんと仁王がおそらく雲外鏡と思われる妖怪に連れ込まれたんだ。助ける方法はあると思うか」
柳の言葉に日吉はひどく驚いた様子を見せた。
ちょっと待ってください、と彼は顎に手を添える。記憶を辿っていくが目ぼしい情報はこれといって無い。視界の端でうずうずしている赤也が煩わしかった。果てには早くしろよ!と茶々を入れるので柳に頭を叩かれていた。「…あんまり当てにならないんですけど」漸く日吉は口を開く。
「雲外鏡は具体的に何をする妖怪かっていうのが定まってないんで、本によってかなり解釈が違うんですよ」
「それで?」
「俺が読んだ本では、鏡を行き来できると書いていました。もしかしたらそこから何かヒントが得られるかも」
「よし鏡だな。日吉、忍足や宍戸たちを連れて来い」
「何でですか?」
「人手が必要だ。この学校にどのくらい鏡があると思っている」
その言葉を聞いて赤也がげんなりとする。確かにこのバカ広い学校の鏡を自分たちだけで全て確認するのは至難の業だ。
新たな人手は日吉に宍戸、鳳、忍足、向日、樺地だ。この者たちは全員紫苑が何をしに氷帝へ来たのか知っている者たちだ。他者に無駄に知られて騒ぎになるのは反って拙いことになるので、理由を知っている者たちでの捜索となった。
「少しでもおかしいと感じたらすぐに連絡しろ、良いな」
跡部の言葉に皆頷く。
(先輩…待っててくださいっす!!)どうしようもない不安を隠すように、赤也はこっそり拳に力を込めた。
「引きこまれたって感じだったっす…」
校舎裏には赤也に柳、跡部、芥川が集まっていた。今にも泣き出しそうな赤也を宥め、柳は詳しい説明を求める。
「水溜まりから手が出て…紫苑先輩の足を引っ張って水溜まりの中に引きこんだんすよ!そんでそのすぐ後に仁王先輩も引きこまれて…」
「仁王までやられたのか」
跡部は意外そうに言う。そんな彼に柳は「仁王も多少霊感があるらしい。おそらく“釣られ”たんだろう」と答えた。
その場には鏡が取り残されている。彼女たちの件もあり、皆は水溜まりは避けている。しかしながら原因がこの鏡にあるのならそれに触るのも危ないだろう。文字通り、彼らは何もできないでいた。
そんな中「あ、居た居た」と男子の声が聞こえた。
「日吉?」
「幽霊の件、解決したんですか?したんなら早く戻ってきてほしいんですけど」
突然の彼の登場に皆驚いたのだが、跡部は閃いたとばかり顔を輝かせた。そして彼をこっちに呼び寄せた。
「何ですか」
「日吉、お前鏡が関わる霊の話とか知らねえか?」
「鏡?」
突然何だと言わんばかりに日吉は眉をひそめる。だが地面に置かれた鏡を見つけ、今度は違う意味で眉をひそめた。紫苑や仁王が居ないことが気になりつつも、彼は頭をフル回転させる。
「これは幽霊とかじゃないんですけど…」
「ああ」
「“雲外鏡”っていう妖怪なら知ってますよ」
「うんがいきょう?」
芥川は訝し気に反芻する。その目はいつもの眠たげなそれではなく、紫苑たちの身を案じているものだった。
えーと、と日吉は頑張って記憶の引き出しを開ける。
「確か魔物の正体を明らかにするといわれている伝説上の鏡で、百年を経た鏡が妖怪と化した付喪神であり、妖怪となった自分自身の顔を鏡面に映し出しているもの、または照魔鏡に映された妖怪たちが照魔鏡を操って動かしているもの…だとか」
「うーん、つまり悪い妖怪ってことか?」
理解が追いつかないので赤也はじれったそうに言う。
「あー…それはケースバイケースじゃないのか?」
「ま、そうだな。して日吉、土御門さんと仁王がおそらく雲外鏡と思われる妖怪に連れ込まれたんだ。助ける方法はあると思うか」
柳の言葉に日吉はひどく驚いた様子を見せた。
ちょっと待ってください、と彼は顎に手を添える。記憶を辿っていくが目ぼしい情報はこれといって無い。視界の端でうずうずしている赤也が煩わしかった。果てには早くしろよ!と茶々を入れるので柳に頭を叩かれていた。「…あんまり当てにならないんですけど」漸く日吉は口を開く。
「雲外鏡は具体的に何をする妖怪かっていうのが定まってないんで、本によってかなり解釈が違うんですよ」
「それで?」
「俺が読んだ本では、鏡を行き来できると書いていました。もしかしたらそこから何かヒントが得られるかも」
「よし鏡だな。日吉、忍足や宍戸たちを連れて来い」
「何でですか?」
「人手が必要だ。この学校にどのくらい鏡があると思っている」
その言葉を聞いて赤也がげんなりとする。確かにこのバカ広い学校の鏡を自分たちだけで全て確認するのは至難の業だ。
新たな人手は日吉に宍戸、鳳、忍足、向日、樺地だ。この者たちは全員紫苑が何をしに氷帝へ来たのか知っている者たちだ。他者に無駄に知られて騒ぎになるのは反って拙いことになるので、理由を知っている者たちでの捜索となった。
「少しでもおかしいと感じたらすぐに連絡しろ、良いな」
跡部の言葉に皆頷く。
(先輩…待っててくださいっす!!)どうしようもない不安を隠すように、赤也はこっそり拳に力を込めた。