「まず何でこないなことになってんのか考えるんや」
暗い教室内にて紫苑と丸井は廊下にいる化物たちから身を隠しながら、今回の経緯についてまとめていた。
「元々はこの手紙で旧校舎まで来たけど…これとここにいるバケモンたちは関係あんのか?」
「知らん。でもタイミング良すぎやし、これが関係してることは間違いないやろ」
「だよなぁ」
携帯電話のディスプレイを確認する。中に入ってから三十分以上経っている。紫苑はともかく丸井はテニス部の連中が彼の不在を訝しく思うに違いないから、そろそろ彼を探して動き出しているのではないだろうか。それに旧校舎に呼び出しの件についてジャッカルと真田は知っている。外界からの助けが期待できるかもしれない。(……まあ、あんまアテにせんほうがええわな)極力己の力でなんとかしなければ。
「まず出口を探さなあかんわけやけど…」
「でも廊下の奴らどうすんだよ」
「推測やけど……あいつらは別にここに棲みついてるわけやない。多分、誰かに呼び出されたんやろ」
「は?何で分かるんだよ」
「見鬼(けんき)や」
耳慣れぬ単語に丸井が眉をしかめる。
「見鬼ってのは霊的なモンを視る為の力や。うちにはその力が生まれた時からあってな…それを応用すればここの妖どもが元々ここにおったかどうかを視るなんてわけないわ」
「お前………チートすぎね?」
「アホ。うちかて弱点くらいあるわ」
閑話休題。
ともかく、それを使ったところ今まで襲ってきた妖たちはどうにも古くから棲んでいるわけではないという結論に至った。とすれば誰かがここに妖たちを呼び出したということになる。それは一体誰なのか。
「…手紙の差出人、か?」
「まあそうなるわな」
今時旧校舎に用がある者など限られているだろうし、そんなところへ紫苑を呼び出すという時点で後ろ暗い理由があると容易に察することができる。
「妖を呼び出した呪符がどっかにある筈や。それを破壊すればこいつらを消すことができる」
「おお…!お前がさっきやってたみたいな感じか!」
「せや」
取り敢えず旧校舎内にいる妖たちを一掃し、元凶の人間の元へ行かなければいけない。
「そうと決まれば早速探しに行くか」
「…こういう類の妖を出すんやったら鬼門に呪符を置くんが定石やろうな」
鬼門とは鬼が出入りする門のことで艮(うしとら)の方角にある。更にこの鬼門の真裏の方角である坤(ひつじさる)も裏鬼門と呼ばれ、同様の使われ方をしているため忌み嫌われている。呪符が置かれている確率が高いのはこの二つの方角だろう。丁度人数が二人なので別れて札を破壊しに行きたいところだが…。
「……(丸井やしなぁ)」
「??」
せめて仁王ならまだ頼めたかもしれないが、丸井は危機回避能力はあれど仁王ほど感が強くない。こんなところで一人きりにさせるのは不安だ。時間ロスは痛いが一緒に行動するしかないだろう。
「丸井、取り敢えず艮の方角に行くで。そこに呪符がある可能性が高いからな」
「おう!うしとらの方角ってどっちだ?」
「東北や東北!そんなことも知らんのかい!!」
「いや普通は知らねえよ!!」
幸先が不安すぎるが仕方ない。紫苑は式を構えて部屋を出た。丸井の文句は聞かないことにして。