感応者の苦悩
立海テニス部部室にて。
「丸井の奴、遅いな…」
柳蓮二のぼやきに仁王は顔を上げた。
「ホームルームは終わっとるじゃろうに」
「あいつは部活をサボるような奴じゃない。何かあったのだろうか」
最近の超常現象騒ぎを思い出したのか、柳の眉根が寄る。柳の思う通り、彼は勉強において不真面目な点があるものの決して部活を安易にサボるような者ではない。何かあったと考えるべきだろう。
「あれ?ブン太のやつ来てねえの?」
彼と一番仲の良いジャッカルが「あちゃー」という顔をした。
「何か知っているのか?」
「いや…うーん、まあ……思い当たる点があるってだけで…」
「ほう、気になるのう。話しんしゃい」
にやりと笑って詰め寄ればジャッカルがうっと唸って数歩下がった。ジャッカルは柳と仁王を顔を見比べ、やれやれと肩を落として降参した。
「実はな…土御門の下駄箱に“旧校舎に来い”って書かれた手紙が入ってて…」
「土御門さんの!?」
意外な人物の登場に仁王は驚きを隠せない。と同時に、嫌な予感がした。「多分ブン太の奴、土御門が心配で旧校舎に行ったんだと思うぜ」ほれみろ、碌なものじゃない。思わず溜息をつけば柳も困ったように顔を歪ませた。
「丸井と土御門が人智を超えた現象に巻き込まれている確率94%」
「たっか!」
「丸井だけなら35%だが、土御門が傍にいるならその可能性は高い」
「参謀、土御門さんを幽霊ホイホイみたいに思ってないか?」
何気に酷い扱いだなと思うものの、仁王自身ちょっとそんな感じに思っている節があったため人のことは言えない。
「仕方ないな…」柳が顎に手を添えて思考する。その時、んん?と仁王の五感がぴりっと何かを察知した。
「仁王、試しに旧校舎まで見に行って来てくれないか」
「………やっぱし」
勘が当たって嬉しいような悲しいような。「済まない。だがそちら関連で役に立つ人間はお前しかいない」柳の説得により、仁王はしぶしぶ旧校舎に向かうことにした。
何が起こっているのか分からないので旧校舎には決して入らず、付近に丸井の姿が見られなかったら連絡をくれと柳に言われた。やれやれ面倒くさいなと思いつつ、一応は大切な部活仲間なため文句は胸の内にしまっておく。紫苑のことも気がかりだったので部活をサボる口実に探してみるか、と少々薄情なことを考えてみる。
「ここか」
旧校舎に来たのは今回が初めてだった。思いの外おどろおどろしい空気に当てられ、仁王の体に緊張が走る。多分ここは普通ではない。もしかしたら二人は想像しているよりも厄介なことに巻き込まれているのかもしれない――そんなことを考えて、仁王は旧校舎の入り口に近づく。
入り口は封鎖されていなかった。むしろ半開きになっていてこちらを招いているようにも窺える。絶対に罠だろう。入らないほうが良いと本能が訴えている。
“あなたまでそうなの…?”
それなのに声が聞こえた直後、仁王は背中を強く押されて旧校舎へ足を踏み入れてしまった。慌てて振り返ってドアを押してみるが、びくともしなかった。
「丸井の奴、遅いな…」
柳蓮二のぼやきに仁王は顔を上げた。
「ホームルームは終わっとるじゃろうに」
「あいつは部活をサボるような奴じゃない。何かあったのだろうか」
最近の超常現象騒ぎを思い出したのか、柳の眉根が寄る。柳の思う通り、彼は勉強において不真面目な点があるものの決して部活を安易にサボるような者ではない。何かあったと考えるべきだろう。
「あれ?ブン太のやつ来てねえの?」
彼と一番仲の良いジャッカルが「あちゃー」という顔をした。
「何か知っているのか?」
「いや…うーん、まあ……思い当たる点があるってだけで…」
「ほう、気になるのう。話しんしゃい」
にやりと笑って詰め寄ればジャッカルがうっと唸って数歩下がった。ジャッカルは柳と仁王を顔を見比べ、やれやれと肩を落として降参した。
「実はな…土御門の下駄箱に“旧校舎に来い”って書かれた手紙が入ってて…」
「土御門さんの!?」
意外な人物の登場に仁王は驚きを隠せない。と同時に、嫌な予感がした。「多分ブン太の奴、土御門が心配で旧校舎に行ったんだと思うぜ」ほれみろ、碌なものじゃない。思わず溜息をつけば柳も困ったように顔を歪ませた。
「丸井と土御門が人智を超えた現象に巻き込まれている確率94%」
「たっか!」
「丸井だけなら35%だが、土御門が傍にいるならその可能性は高い」
「参謀、土御門さんを幽霊ホイホイみたいに思ってないか?」
何気に酷い扱いだなと思うものの、仁王自身ちょっとそんな感じに思っている節があったため人のことは言えない。
「仕方ないな…」柳が顎に手を添えて思考する。その時、んん?と仁王の五感がぴりっと何かを察知した。
「仁王、試しに旧校舎まで見に行って来てくれないか」
「………やっぱし」
勘が当たって嬉しいような悲しいような。「済まない。だがそちら関連で役に立つ人間はお前しかいない」柳の説得により、仁王はしぶしぶ旧校舎に向かうことにした。
何が起こっているのか分からないので旧校舎には決して入らず、付近に丸井の姿が見られなかったら連絡をくれと柳に言われた。やれやれ面倒くさいなと思いつつ、一応は大切な部活仲間なため文句は胸の内にしまっておく。紫苑のことも気がかりだったので部活をサボる口実に探してみるか、と少々薄情なことを考えてみる。
「ここか」
旧校舎に来たのは今回が初めてだった。思いの外おどろおどろしい空気に当てられ、仁王の体に緊張が走る。多分ここは普通ではない。もしかしたら二人は想像しているよりも厄介なことに巻き込まれているのかもしれない――そんなことを考えて、仁王は旧校舎の入り口に近づく。
入り口は封鎖されていなかった。むしろ半開きになっていてこちらを招いているようにも窺える。絶対に罠だろう。入らないほうが良いと本能が訴えている。
“あなたまでそうなの…?”
それなのに声が聞こえた直後、仁王は背中を強く押されて旧校舎へ足を踏み入れてしまった。慌てて振り返ってドアを押してみるが、びくともしなかった。