悪夢を裂く一撃
「柳、丸井と仁王を知らないか」
仁王が旧校舎を見に行って十五分程度、経過した。柳は二人を探す真田にさてどう言い訳しようかと考えを巡らした。
「ああ、二人は少し…訳があってな」
「訳?」
首を傾げる真田。「二人とも先生から呼び出されたんだ」咄嗟に言った内容に、そうなのかと真田はあっさり信じた。純粋なのか何なのか、信じやすい真田の性質に若干心配する。
そんな中、ふと部室の扉が開いた。
「柳センパーイ、なんか書類を柳先輩に渡してほしいって言われたんスけど」
これ、と赤也から渡された書類に柳は眉をしかめた。
「どうしたのだ、柳」
「いや……」
この書類、教師から既に貰い受けているものだ。「赤也、これは誰から受け取ったんだ?」訊けば、赤也は少し眉根を寄せて「女子生徒ッスよ」と答えた。
「女子生徒?」
「マジメそうな先輩でしたよ。それがどうしたんスか?」
“旧校舎の前で待っています”明朝体の文章の一番最後に手書きで書かれた、その言葉。これは今旧校舎で起こっていることと関係があるのか。(仁王はまだ帰ってこないのか)十中八九、旧校舎の中へ入ったのだろう。あれ程入るなと言ったのに、と思いながら柳は部室を出る。
「済まない弦一郎。少し用ができた」
「用だと?…仕方がないな、すぐに済ませて帰ってこい」
「ああ、ついでに仁王と丸井も見てくる」
「頼んだ」
旧校舎に向かえば物々しい空気が柳を歓迎した。柳は校舎の至るところを大体記憶しているが、旧校舎の中までは確認したことがなかった。というのも、旧校舎は老朽化の影響により立ち入りが禁じられていたのである。もうじき取り壊すという案も出ているらしい。
「どうしたものか」
何かの異変などは感じられない。まあ、自分はおそらくそういった“感”はないと自覚しているため当たり前であったが。
「あの」
「!」
ふと、女子の声が。
「君か。俺を呼び出したのは」
こくんと小さく頷く女子生徒。同じクラスの生徒ではない。この生徒は確か仁王のクラスメイトではなかっただろうか。
「それで、何の用だ。生憎俺は忙しい。手短に頼む」
「幸村くんを病気にさせたのは土御門さんの所為なの?」
「、は?」
素っ頓狂な質問にぎょっとする。
「それは…どういう意味だ」
「そのままの意味だよ」
「…………幸村の病気は土御門の所為じゃない。それは確かだ」
「何でそこまで言い切れるの?」
不審感を露わにする女子生徒に柳は当惑した。この生徒、紫苑の正体を知っているのか?
「あの人がきっと悪いんだよ!」
「………」
「だって、あの人がテニス部に関わった途端にみんな酷いことに巻き込まれてるじゃない!」
「丸井や仁王が今みたいな状況に、か?」
女子生徒はピクリと肩を揺らす。
「あ、あれは………最近土御門さんが悪目立ちするから、ちょっとお仕置きみたいな感じで…………なのに丸井くんまで来るから…その…」
成程、旧校舎での騒ぎはこの女子生徒が原因のようだ。柳は息を吐く。
「あいつの為に弁解しておくが、一連の騒ぎは決して土御門が原因じゃない。むしろ俺たちが彼女を巻き込んだんだ」
「え……?」
「ああいった類のものに関して俺たちは無知だからな。そこで詳しそうな土御門に仁王伝いで相談したんだ」
それに、原因は結局氷帝にあったしな。と述べれば女子生徒は茫然としていた。
「えっと、じゃあ………あたしの勘違い?」
「そういうことになるな」
「…………………」
「…………………」
「ご………ごめんなさい…」
至極申し訳なさそうな顔をする女子生徒。泣く寸前の表情に思わず慰めようとしたら、急に彼女は顔色を変えた。
「早く助けなきゃ!」
「ああ、そういえば土御門たちは旧校舎にいるんだったな」
「そう。あたし、閉じ込めちゃったの」
妖怪が出やすくなるように呪符も貼っちゃった、と慌てる彼女について行く。「あれ?」旧校舎の扉を開けようとする彼女が不思議そうに首を傾げる「開かない」「貸してみろ」試しに柳も押してみたがびくともしなかった。「な、何で?」顔面蒼白な女子生徒に、嫌な予感した。
「そんなんじゃ開かないよ」
突然聞こえた第三者の声。
「お前は…」
いつの間にいたのか、背後には紫苑の友人がいた。仁王によると学校では大体紫苑と一緒にいるらしい。名前は確か――――。
(何だ……?)
思い出せない。誰だったんだ、こいつは。
「人力じゃ、もうそこは開けられやせんぜ、旦那」
とても女子生徒とは思えない口調と声で、紫苑の友人は言った。
仁王が旧校舎を見に行って十五分程度、経過した。柳は二人を探す真田にさてどう言い訳しようかと考えを巡らした。
「ああ、二人は少し…訳があってな」
「訳?」
首を傾げる真田。「二人とも先生から呼び出されたんだ」咄嗟に言った内容に、そうなのかと真田はあっさり信じた。純粋なのか何なのか、信じやすい真田の性質に若干心配する。
そんな中、ふと部室の扉が開いた。
「柳センパーイ、なんか書類を柳先輩に渡してほしいって言われたんスけど」
これ、と赤也から渡された書類に柳は眉をしかめた。
「どうしたのだ、柳」
「いや……」
この書類、教師から既に貰い受けているものだ。「赤也、これは誰から受け取ったんだ?」訊けば、赤也は少し眉根を寄せて「女子生徒ッスよ」と答えた。
「女子生徒?」
「マジメそうな先輩でしたよ。それがどうしたんスか?」
“旧校舎の前で待っています”明朝体の文章の一番最後に手書きで書かれた、その言葉。これは今旧校舎で起こっていることと関係があるのか。(仁王はまだ帰ってこないのか)十中八九、旧校舎の中へ入ったのだろう。あれ程入るなと言ったのに、と思いながら柳は部室を出る。
「済まない弦一郎。少し用ができた」
「用だと?…仕方がないな、すぐに済ませて帰ってこい」
「ああ、ついでに仁王と丸井も見てくる」
「頼んだ」
旧校舎に向かえば物々しい空気が柳を歓迎した。柳は校舎の至るところを大体記憶しているが、旧校舎の中までは確認したことがなかった。というのも、旧校舎は老朽化の影響により立ち入りが禁じられていたのである。もうじき取り壊すという案も出ているらしい。
「どうしたものか」
何かの異変などは感じられない。まあ、自分はおそらくそういった“感”はないと自覚しているため当たり前であったが。
「あの」
「!」
ふと、女子の声が。
「君か。俺を呼び出したのは」
こくんと小さく頷く女子生徒。同じクラスの生徒ではない。この生徒は確か仁王のクラスメイトではなかっただろうか。
「それで、何の用だ。生憎俺は忙しい。手短に頼む」
「幸村くんを病気にさせたのは土御門さんの所為なの?」
「、は?」
素っ頓狂な質問にぎょっとする。
「それは…どういう意味だ」
「そのままの意味だよ」
「…………幸村の病気は土御門の所為じゃない。それは確かだ」
「何でそこまで言い切れるの?」
不審感を露わにする女子生徒に柳は当惑した。この生徒、紫苑の正体を知っているのか?
「あの人がきっと悪いんだよ!」
「………」
「だって、あの人がテニス部に関わった途端にみんな酷いことに巻き込まれてるじゃない!」
「丸井や仁王が今みたいな状況に、か?」
女子生徒はピクリと肩を揺らす。
「あ、あれは………最近土御門さんが悪目立ちするから、ちょっとお仕置きみたいな感じで…………なのに丸井くんまで来るから…その…」
成程、旧校舎での騒ぎはこの女子生徒が原因のようだ。柳は息を吐く。
「あいつの為に弁解しておくが、一連の騒ぎは決して土御門が原因じゃない。むしろ俺たちが彼女を巻き込んだんだ」
「え……?」
「ああいった類のものに関して俺たちは無知だからな。そこで詳しそうな土御門に仁王伝いで相談したんだ」
それに、原因は結局氷帝にあったしな。と述べれば女子生徒は茫然としていた。
「えっと、じゃあ………あたしの勘違い?」
「そういうことになるな」
「…………………」
「…………………」
「ご………ごめんなさい…」
至極申し訳なさそうな顔をする女子生徒。泣く寸前の表情に思わず慰めようとしたら、急に彼女は顔色を変えた。
「早く助けなきゃ!」
「ああ、そういえば土御門たちは旧校舎にいるんだったな」
「そう。あたし、閉じ込めちゃったの」
妖怪が出やすくなるように呪符も貼っちゃった、と慌てる彼女について行く。「あれ?」旧校舎の扉を開けようとする彼女が不思議そうに首を傾げる「開かない」「貸してみろ」試しに柳も押してみたがびくともしなかった。「な、何で?」顔面蒼白な女子生徒に、嫌な予感した。
「そんなんじゃ開かないよ」
突然聞こえた第三者の声。
「お前は…」
いつの間にいたのか、背後には紫苑の友人がいた。仁王によると学校では大体紫苑と一緒にいるらしい。名前は確か――――。
(何だ……?)
思い出せない。誰だったんだ、こいつは。
「人力じゃ、もうそこは開けられやせんぜ、旦那」
とても女子生徒とは思えない口調と声で、紫苑の友人は言った。