「え、ナニコレ」
仁王は困惑と同時にある可能性に行き着く。もしや先程紫苑が述べていた呪符というやつではないのか、と。「いやいやいや…」もしこれが本物ならかなり困る。紫苑によると呪符によって妖たちが集まって来ている。とするならば、ここに長時間滞在していたら妖に遭遇する確率が上がってしまう。今すぐ逃げねばならない。――と思うものの、もう一度彼女と連絡を取って呪符の在り処を教えてやらねばならない。
「早よ来てくれ」
メールを送信し、ここからどうすべきか思案する。残るべきか否か。
「っ!」
しかし残るという選択肢はなくなったようだ。

“キケケケケケケ”

大髑髏の化物が空間を割って出現した。仁王に対応する術はない。すぐさま踵を返した。だが激しい音を鳴らしてあとを追ってくる大髑髏。
“ケケ、ケケケ、ケケ、ケケケケケ”
「しつこいのうっ!」
すると前方からも小さな化物たちがやって来た。まずい、挟まれた。
(ヤケクソじゃっ!)
勇気を持って――ジャンプ!
足の先に何かが触れる感触。ぞわりと背筋が粟立ったが、それを気にしている暇はない。急いでその場を離れた。気配はまだ、ある。

「仁王ッ!!!」

あの勇敢な声が聞こえた。
「つっ土御門さん!!」
「よー仁王!助けに来てやったぜ!」
丸井の余裕綽々な姿が憎らしいが、紫苑が式を構えたので慌てて脇に寄った。
「騰蛇!鬼魔駆逐 急々如律令!」
あの鬼蛇が化物を燃やし尽くす。轟々と燃える炎をぼんやり眺め、漸く終わったのだと長く息を吐いた。
「土御門さん……ありがとう。よう見つけてくれたのう」
「やかまし」
ふん、とそっぽを向く紫苑。思ったよりもピンピンしていて安心した。

「紫苑!仁王!!」

しかし。
鬼が。
丸井の声が、やけに遠く感じた。
振り向いたすぐそこには、大口を開けた鬼が迫っていた。そうだ、札はまだ剥がしていなかった……そんなことを呑気に考え、仁王は咄嗟に紫苑を腕の中に隠した。