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※以前、ネタ帳に置いていた文章を多少変えて再掲。

約ネバ熱が最高潮だったときに気づいたら出来上がってた文章です。本当は長編になるはずだった残骸みたいなもの。キャラと全然絡まない。唐突に始まって、唐突に終わる。



「これ、なあに?」
「まっくらでよく見えない……」
「門だよ。中と外をつなぐもの」
「外かあ……。一度も行ったことないよね」
「これ、一体なにから僕たちを守ってるんだろう」


物音ひとつとない静けさ。それが、妙に恐怖を煽っていた。触れた鉄の柵はとても冷たくて、掌の温度を奪っていく。ひどく無機質に感じられた。





「ん、」


不意に意識が浮上して、ゆっくりと瞼を開ける。まだぼやける視界は部屋の薄暗さと寝静まる子供達を捉え、起床の時間にはなっていないことを知った。何度か瞬きを繰り返し、それからもぞもぞと寝返りを打つ。横を向いていた体を上に向け、天井の木目をぼんやりと眺めながら眠気を追い出すためにもう一度瞬いた。

あの木目を見ていると、何かの顔のように思えて怖い怖いと恐れていた幼い頃を思い出す。発見した当時はエマと二人で身を寄せ合い、ひたすらにぷるぷると震えていた。天井を指差して訴える私達にレイは呆れ、ノーマンには慰められたっけ。

少し恥ずかしい思い出なのだけど、仕方がないじゃないかとも思う。普通に怖かったのだ。年齢も片手で足りる頃の話で。いや、今でも不気味だとは感じるけれど。黒髪の少年の小馬鹿にするような表情まで思い出してしまって、誰に言うでもなく心の中で呟く。

そうしている内に眠気も無くなってきた。そっと思考を隅に追いやって、なるべく音を立てないようにを体を起こす。その際に僅かにベッドが軋む音を立てたけれど、それだけでは眠りの妨げにはならなかったらしい。穏やかな寝息があちこちから聞こえ、人知れず安堵した。

部屋の壁にかかる時計を見て朝の鐘が鳴る時間よりも三十分ほど早いことを確認すると、ベッドの横に設置された自身の収納スペースから洋服を取り出す。毎日同じ組み合わせなので、服を選ぶのに時間は必要ない。真っ白なシャツとスカート。外の世界のことはわからないけれど、このハウスではみんなが同じ格好をしている。

着替えを終えて顔を上げると、いくつかベッドを挟んだ先に見慣れた鮮やかなオレンジが揺れていた。洋服と同様に汚れひとつとない純白の布団が、規則正しく上下を繰り返している。ぐっすりと眠っているようだ。きっと起床の時間になれば、いつもの元気な声が響くのだろうと思うと自然と笑みがこぼれた。

そういえば。エマを見て、不意に今朝見た夢の内容を思い出す。幼いエマが夢に出てきていた。レイやノーマンも。あれは確か、同い年の四人で規則を破って門に探検に行った時のもの。何年も前の話だけれど、不思議とあの時の記憶は色濃く残っていた。
冒頭(約ネバ)