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「《ねぇセブルスは帰らなくていいの?》」
「帰って欲しいのか?」
「《ううん。いてくれて嬉しいよ》」

何せ僕は城から出られないしね。

汽車が吹き出す白い煙を窓から身を投げ出しながら見ていると、徐々に汽車は青い景色の中へと消えていく。
そうして汽車を見送れば、この城にはもう先生しかいなくなる。

先生も家に帰る人もいれば、ホグワーツに残る人もいるが、ここ数年スネイプは家に帰らず、静かになったホグワーツで、毎年のようにナマエとの生活を迎えていた。

スピナーズ・エンドにある自宅にはもうずっと帰っていない。

「《誰もいないからくっついても怒られないね〜》」
「…全く人がいなくなった途端にこれだ」
「《セブルスが人がいると嫌そうにするから我慢してるんじゃん》」

室内で呆れたような顔をするスネイプに、抱き着くような真似をすると相変わらず身体は透けるが怒らないあたり、まんざらでもないようだ。
怒った所で触れるわけではないのだが。

「…」

だが時々こうして手を伸ばすと、触れるんじゃないかと思ってしまうのだ。

「《セブルス?》」
「やっぱりお前は幽霊だな」
「《まぁね》」

頭を触れようとした手は空をかすめたが、その手はほんのり暖かい。
それはこの半透明の幽霊が、たしかに幽霊で、たしかにその場所にいるという証なのだが。
触れたくても触れられないこの距離感が、なんとももどかしい事だろう。

だがそんな事を言った所で触れられるわけでもない。
何事もなかったかのように腕を降ろし、ごまかす様に散らばった書類の片づけに手を伸ばした。

「《いつかセブルスにちゃんと触れる時が来るかなぁ》」
「フン、幽霊だとさっき自分で言っただろう」
「《そうだけどさ。…まぁ所詮夢って奴かな》」

光の差し込む窓に手を向けると、ナマエの手は顔に影を作ることはない。
薄い光を通してその半透明はキラキラと透き通る。

その姿はまたいつか消えてしまいそうな儚さで、スネイプはその姿をなるべく見ないように視線をそらした。