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「《ねぇどうして泣いてるの?》」
「…幽霊?」
「《僕はナマエ。スコージファイ(清めよ)》」
「?!」
「《服、綺麗にしたけど余計だった?》」
「魔法が使えるのか?」
「《ふふん。まぁね》」
「…頼む。僕に呪文を教えてくれないか」
「《幽霊を先生にするの?変わってるね》」
「見返したい奴がいるんだ!」
「《…ふふ、いいよ。そういうの嫌いじゃない。君の名前は?》」
「セブルス・スネイプ。スリザリンだ」
「《よろしく、セブルス》」










「…何をニヤニヤしているんだ」
「《うん?別に、昔の夢を見てただけ》」
「生前か?」
「《いや、君と出会った頃の事を》」

小さいセブルスは可愛かったなぁ、と昔を懐かしむように言った後にナマエはハッとして口を噤んだ。

学生時代はスネイプには嫌な思い出なのだ。
すっかり嫌なことを思い出させる地雷を踏んでしまい、そっとスネイプの顔を伺うと想像していた嫌そうな顔ではなく、至っていつも通りの表情で紅茶を飲んでいる。

「《あれ、怒らないの?》」
「たしかに嫌な記憶ではあるが、あれがなければナマエとも会えなかっただろう」
「《…セブルス!大好き!!》」
「ブッ」

空中に粒子で大きなハートを描くと、紅茶が器官に入ったらしい。
げほげほとむせ返るスネイプを見て、なんだか悪い事をしたような気がした。
身体があれば背中でもさすってあげられるのだが、あいにくと透ける身体のナマエは何もしてあげられない。

スネイプの息が整うのを待つ間、まだ開けていなかった日刊預言者新聞にさらっと目を通す。
特に面白い記事もなく、読みたいページもあまりない。
ぺらぺらと杖で読み飛ばしていくと、案外厚みのあった日刊預言者新聞もすぐに一周してしまった。


思ったより早く読み終わったけど、どのくらい時間がたっただろうか。

ナマエは時計を見ると、ようやく息が落ち着いたらしいスネイプの傍に行った。

「《そ、そういえばそろそろパーティーじゃない?もう行こうよ》」
「…ふむ。もうそんな時間か」

話を切り替えるように時計を指さすと、もう大広間でパーティーがはじまる時間だ。

部屋を出ないと間に合わないだろう。

スネイプを急かすように扉を開けて廊下に出てまっすぐ大広間へ向かう。



大広間はまだ学生がおらず、静けさに包まれていたが、今日は新しい先生の歓迎パーティーのためにと大きなテーブルとそれを囲むように人数分のイスが用意されていた。

先にきた先生は好きな席に座り歓談をして時間が過ぎるのを待っているようだ。
ホグワーツ城の先生方は、女性が多い事もあって皆おしゃべりだ。
積もる話もあるのだろう。夢中になって話している。

だがそんな中に真っ黒い蝙蝠のような男と、半透明の幽霊が現れればそれはそれは目立つのだ。

「あら、やっぱりナマエも来たのね。ほら、セブルスの隣に座りなさい」
「《こんにちは、スプラウト先生。マダムフーチも。僕が座っていいんでしょうか?》」
「あなたは助手のようなものでしょう。ほら、セブルスも座りなさい」

スネイプと一緒に大広間へ入ると、あれよあれよという内にナマエもスネイプの隣に座った。
どうやら最初からナマエの分の席も用意してあったらしい。
イスの数が足りなくなる事はなかった。

後から現れたダンブルドアがイタズラが成功したようにパチンとウィンクした。









「それでは紹介しよう。今年の防衛術の先生じゃ。ギルデロイ・ロックハート先生じゃ」
「勲三等マーリン勲章、闇の力に対する防衛術連盟名誉会員、そして週刊魔女五回連続『チャーミング・スマイル賞』受賞のギルデロイ・ロックハートです」

その名誉紹介いる?とげんなりしていると、スネイプも同じことを思ったらしい。
苦虫をかみつぶしたような心底嫌そうな顔をしている。
闇の魔法防衛術の先生はどうしてこう一癖も二癖もあるのだろうか。

一方キラリと白い歯を見せて笑うロックハートに、女性たちはぽやっと見惚れていた。



ちなみにこの自己紹介から始まった歓迎パーティーは七割がたロックハートの自慢話に終わった。
一聞けば十勝手にしゃべり出すロックハートから席が離れていてよかったと二人は思っていた。

普段より何割増しも姦しい歓迎パーティーを終えると、ダンブルドアをはじめ先生達は自室へとそれぞれ戻っていった。
スネイプとナマエも例外なく地下へ戻ろうと席を離れると、それを呼び止める声がした。

「ちょっとそこの君!」
「…我輩かね」
「いや、そこの幽霊君だ。君、もうちょっと顔をよく見せてくれないか」
「《…何か?》」

それは先ほど女性職員に囲まれていたロックハートだった。

ずかずかとナマエへ近寄ると、なんの前置きもなく顔がぐっと近づいた。
突然の事に思わずのけぞり、慌ててスネイプの後ろに飛んで隠れると何を思ったのか考えたような仕草をしてからにっこり笑った。

「美しい!恥ずかしがり屋な所も可愛いね!君は…あー、そこの彼の助手なのかい?」
「《…まぁ、そう…なのかな?》」

さっきマダムフーチ達はそう言ってくれて実は嬉しかったのだが、スネイプはどうだろうか。

否定はせずにちらりとスネイプの反応を見ると、あからさまにロックハートに嫌そうな顔をしていた。

どうやら助手という所は否定しないあたり認めてくれているらしいが、いかんせん嫌そうな顔をしているのでナマエはなんとも複雑な気持ちだ。

「それでは暇な時でいいので私の授業の手伝いもしてもらえませんか?あなたのような美しい幽霊がいれば私もやる気が出るというものです」

なんだその理由。と突っ込みたかったが、その文字すら浮かび上がらせるのも面倒だ。

「失礼。この幽霊は私の助手なのでね、貸出はしていない」
「おや、そうでしたか。それは失礼」
「…ナマエ、行くぞ」
「《あ、うん。》」

つかつかと大広間を出ていくスネイプの後を追うように飛んでいくと、あっという間に地下牢までやってきた。

ここに戻ってくる間も少し感じたが、どうやらあのロックハートが気に食わないようだ。
目に見えてイライラしている。

「《セブルス?》」
「お前は私の助手なのだろう。ならばこれを用意してくれたまえ」

パッと見せられたのは何種類もの魔法薬の材料と分量が書かれたメモだった。
内容を見る限り新しい一年生のための授業の準備をするらしい。

スネイプはメモを渡すとそそくさと調合途中の鍋に一直線に向かって言ってしまった。

どうやらこの準備はナマエに一任されたようだ。
口うるさいセブルスが珍しい、と少し疑問に思いながらナマエは首をかしげた。







「ふむ、さすが”我輩の助手”なだけある。完璧だ」
「《!ありがとう》」

きっかり指定された分量で人数分分けられた材料を見て、スネイプは満足気に頷いた。
これくらいはいつもナマエがやっている事だからできて当然なのだが。

だが「”我輩の助手”」という所を強調した言葉に、ナマエは体中が熱に侵されたように熱くなるのを感じた。

「《授業の手伝いをするのはセブルスだけだよ》」
「…ふん」