14
あたりを照らしていた日が落ち、新一年生が湖を超えてそろそろホグワーツについた頃だろう。
かすかにバキバキッと何かが折れるような音がした。
鍋での調合を終えて、大広間でのパーティーに向かう最中、ナマエの耳に聞きなれない不審な音が聞こえた。
はて、ここらへんで折れるような何かはあっただろうか。
「《セブルス、ここらへんでバキバキッて折れるような何かってある?》」
「?…暴れ柳なら折れるだろうが、どうかしたのか?」
「《何かが勢いよく折れる音がした》」
「何かあってからでは遅い。パーティーは後回しだ。行くぞ」
「《はーい》」
大広間とは真逆の方へとローブを翻して歩を進めると、暴れ柳はかなり大きいらしい。
城にいてもその姿が見える。
大きな木がうねうねと動いている。
だが、よくよく見れば暴れ柳にはどこからどう見ても似合わない、車が木の枝につっこんでいた。
木は車を振り落とそうとしているのだろう。枝を精一杯動かしている。
それはなんとも不思議な光景であった。
あれ、あの車どこかで見たな。
木が振り落とそうとしている車を見て、ナマエの脳内では部屋を出る前にちらっと見た日刊預言者新聞の内容が思い出されていた。
「《そういえばさっき、日刊預言者新聞に『空飛ぶフォード・アングリア、いぶかるマグル』って記事が出てたよ》」
「我輩は確認をしてくる。ナマエはダンブルドアとマクゴナガルを地下牢へお呼びしろ」
「《はいはい》」
「フッ、ようやくあいつ等を退学にできそうだ」
スネイプの中では誰があんな事をしたのか、もう大方予想はついているらしい。
城から出られないナマエは外をスネイプに任せ、大急ぎで大広間まで飛んで行った。
大広間ではもう組み分けが終わったのか、皆テーブルの上のご馳走に夢中だ。
ダンブルドアとマクゴナガルも生徒達と一緒に教師用の上座で食事を楽しんでいたが、慌ててやってきたナマエに手を止めた。
大々的に文字を浮かび上がらせる事もできず、いつもより小さめの文字を浮かび上がらせて暴れ柳の事を伝えると、二人は顔を見合わせ席をたった。
校長と副校長が同時に席を立った事で、より上座に近い席に座っていた生徒が何かあったのかと訝しがると、やがてその疑問が伝言リレーのように大広間全体を静かにしてしまったが、静寂をごまかすようにナマエは今年もきらきらと輝く粒子でできた特大の花火とウェルカムメッセージを打ち上げた。
「「ハーイ、ナマエ。今年も可愛いね」」
ハリーとロンが不在で心配をしているだろうハーマイオニーの様子を見ようと、グリフィンドール寮のテーブル上を飛んでいると、目立つ双子が大きく手を振っていた。
彼らはいつでも良い目印だ。
「《久しぶり。ハーマイオニーは今日も可愛いね》」
「あっ、無視された」
「ハーマイオニー羨ましいぞ」
「ちょっと…茶化さないでよ!ナマエも!」
「《ふふ、ごめん》」
ナマエが軽口を叩くと、ハーマイオニーは顔を真っ赤にしながら否定した。
それをまた双子が笑い、どうやら心配は杞憂だったようだ。
そんなハーマイオニーにほっこりしながら、今頃こってり絞られているであろうハリーとロンはどうなるかなぁとグリフィンドール席の空に浮きながら2人の事を憂いた。
「あ、そうだ。ナマエ、紹介するよ僕達の妹」
「ジネブラ・ウィーズリーよ。ジニーって呼んでね。えっと…ナマエ?」
ジョージの声に意識を戻されると、双子の間には赤毛の女の子が座っていた。
赤毛にそばかす。
たしかにウィーズリー家の子の特徴だ。
それにしても女の子は珍しい。
すぅっと地面に降りると座っているジニーと目線をあわせるように膝を折った。
「《やぁ、ウィーズリーのお姫様。僕はナマエだよ。よろしくね》」
そして緊張からだろう、ぎゅっと握ったジニーの手に、触れられないものの手を重ねるとにこりと微笑んだ。
それはまるで騎士のような恭しさであったが、どうにもナマエがやると様になる。
ジニーはナマエの重なった手から熱が頭へとのぼってくるような感覚に陥り、一瞬で頬が薔薇色になった。
「うっわ何それカッコいい!俺にもやって」
「《いいけど…男が男にやられて嬉しいの?これ》」
「ナマエって触れると暖かいし幸せな気分になるんだよ」
「《ふぅん?じゃあ双子には特別にハグをしてあげよう》」
触れられないなりにフレッド、ジョージと順番に首に手をまわしてあげると思ったより顔が近かったらしい。
二人ともいつもより締まりのないニヤニヤ顔を浮かべていて、ジニーに怒られていた。
どうやらウィーズリー家は女性の方が強いようだ。