15
「《やぁハリー、ロン。ホグワーツにおかえり》」
「やぁナマエ。どうにか退学にはならずにすんだよ」
「散々だったけどね」
「《あはは、まぁ今後気を付ければいいんじゃないかな。これからなんの授業?》」
ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人組が廊下を歩いていると、天井からぶらりと現れたのはナマエだった。
新学期に入ってから会っていなかったナマエに、ハリーは防衛術の教科書を見せると一瞬で嫌そうな顔をした。
いつもニコニコしているナマエの嫌そうな顔を見たハリー達は目を丸くした。
「《げっロックハート…。気をつけなよ、何するか分からないから》」
「あら静香もロックハート先生が嫌いなの?」
「《うーん。ちょっと苦手かな》」
あの軽い感じでどんな授業をするのか全く想像がつかない。と正直な事を伝えたかったが、三人は今日が初めてのロックハートの授業なのだ。
不安をあおるのもよくないだろうと口を噤んだ。
だがおそらくハリーとロンも同じ事を言いたいのだろう。
ロックハートをかばうハーマイオニーにあきれ顔だ。
「《まぁ何か困った事があったら僕の名前を呼んで。耳がいいからすぐ飛んでいくよ》」
「本当?心強いよ」
「《うん。困った生徒を助けるのは幽霊の役目だよ》」
それじゃあ授業頑張ってね、と三人を見送ると次は何をして過ごそうかと校内の探検にと戻ったのだが、この三人に呼ばれるのはすぐの事であった。
「《呼んだ〜?って何これ!?》」
「ナマエ!ごめん、このピクシーをあの檻に捕まえてくれ!」
やけに焦ったようなハリーの声に呼ばれて姿を現せばそこは阿鼻叫喚とかした教室だった。
何故か野放しになっている小妖精のピクシーが生徒に悪戯をしたり、教科書をやぶったりと悪の限りを尽くしている。
授業の担当であるロックハートの姿は見えない事から、案の定逃げたのだろう。
幽霊のナマエは何の害もないが、生徒たちはたまったものじゃないと机の下に避難している。
「《ハーマイオニーは?》」
「そこの机の下!」
ハリーの指さす机の下に行くと、ハーマイオニーが机の影に隠れるようにして丸まっていた。
「《ハーマイオニー、このピクシーを捕まえるの手伝ってくれる?》」
「て、手伝うって?」
「《ピクシーにはこの呪文がいいかな》」
これは授業なのだからせっかくだしとハーマイオニーに呪文を教えると、彼女はもうその呪文を知っていた。さすが優等生だとナマエは思わず舌を巻いた。
それならば大まかな事は任せても大丈夫だろう。
ハーマイオニーが「イモビラス(動くな)」と唱えると、突如教室中にいたピクシーだけが無重力空間にいるかのように動きを止めた。
「《パック(詰めろ)》」
最後の仕上げにナマエがピクシーの入っていたカゴに魔法をかけると、動きを封じられたピクシーは抵抗する事もなく檻の中へと入っていく。そして最後の一匹がカゴの中に納まり、鍵をかけるとようやく収まった騒動に皆がホッと息を吐いた。
「《ハーマイオニー、さすがだね。あの呪文をもう知っていたなんて》」
「ナマエが来なかったら思い出さなかったわ!」
「全く…ひどい目にあったよ」
「《皆無事…じゃないよね。レパロ(直れ)》」
皆ピクシーに散々やられたようだ。
髪はボサボサ、ローブや教科書はあちこちがビリビリに破けている。
到底外を歩くのも嫌だろう。
杖を一振りすれば、ボロボロになったローブや教科書はみるみる内に元に戻っていく。
最後に怪我人がいない事を確認していれば、もう次の教室へと移動しないと間に合わない時間だ。
忘れ物がないようにと注意をしながら全員を部屋から出すと、最後に部屋を出たハリーにナマエが声をかけた。
「《このピクシーは僕が片づけておくよ。君たちは次の授業に行きな》」
「ナマエ、本当にありがとう」
次の授業に向かうハリー達を見送ると、荒れ放題の教室にはナマエだけになった。
そして机の上に置かれた、檻詰めのピクシーを見てどう扱ったらいいものかと再び頭を悩ませた。