20
ハリーは誰もいない談話室の暖炉の前を陣取ると、ぺらりと古ぼけた日記を捲った。
それはマートルの女子トイレで拾ったばかりの黒く、古い日記帳だった。
表紙が汚れている割には中身は真っ白で綺麗だ。
日記帳なのだから何か書いてみようと机の上に日記を広げると、インクをしみこませた羽ペンから一滴のインクがこぼれ落ちた。
「…あれ?」
そのインクは滲む事なく、スッと吸い込まれるように消えてしまった。
汚れるはずの紙は真っ白のままだ。
これにハリーは俄然日記帳に食いついた。
今度は、と羽ペンでしっかりと文字を書いた。
「こんにちは、僕は…ハリー・ポッターです…」
すると同じようにスッと文字が消えたかと思えば、返事をするように新たな字が書かれていく。
日記はあのトム・M・リドルだと名乗り、心底ハリーを驚かせた。
だが、日記の名前が分かった所でやる事は変わらない。
ハリーが何かを聞けば、日記も必ず返事をする。
そうして何回もやり取りをしているうちに、真っ白で綺麗だったページが少しずつインクのシミが浮かび上がっていたが、ハリーはこの魔法の日記にすっかり胸を躍らせていた。
【この日記には恐ろしい記憶が記されています。覆い隠された、ホグワーツで起きた出来事が。】
「僕は今ホグワーツにいるのです。あなたは秘密の部屋について何かご存じですか?」
【もちろん知っています。僕が五年生の時、部屋が開かれ怪物が生徒を襲い、一人の女学生が殺されました…】
日記はハリーの質問に素直に答え、その答えに驚いたハリーは急いでペンを走らせた。
だが、ハリーはやはり日記のシミは気にも留めない。
【お見せする事もできます。僕の言う事を信じる信じないは自由です。僕が犯人を捕まえた夜の思い出の中に、あなたをお連れする事ができるのです。】
思い出の中にってどういう事だろう。
不思議な返事に首をかしげていると、ハリーの好奇心をくすぐるようにすぐさま次の返事が日記帳に踊っていた。
【お見せしましょう】
「…OK」
そう日記帳に答えを書き、文字がしみこむと日記帳は強い風にあおられたように、突然ページが物凄い音をたててめくられていった。
そしてピタリと一枚のページで止まると、日記の裂け目にハリーの意識は吸い込まれていった。