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「…ここは、校長室?」

ハリーがゆっくりと目を開けば、そこは見覚えのあるホグワーツの校長室だった。
だが、そこにはダンブルドアではなく、当時の校長であるディペットが立っていた。

この人が校長?

顔をじっと見つめると、トントンとドアをノックする音が響いた。
ハリーはビクッと驚いたが、ディペットはハリーなど全く目に入らぬ様子でノックに返事をした。

「失礼します」

ドアを開けて入ってきたのは黒髪で赤い瞳のハンサムな生徒だった。

寮監のバッジをきらりと光らせている。

「あぁ、リドル。入りなさい」
「ディペット先生、何か御用でしょうか?」
「こんな遅くに歩き回るのは感心せんな。だが丁度良かった」

この人がトム・M・リドル。
記憶を見せてくれた人。

まじまじと今度こそその顔を見つめていると、リドルはディペットが呼び寄せ呪文で呼んだイスに座った。

そして少し疲れたような様子で、ディペットもイスに座ると、夏休みの間生徒を全員家に帰す事を伝えた。
話から察するに、リドルは夏休みをホグワーツで過ごしたかったらしいが、校長の判断に納得がいかずに直談判にきたのだ。

じっと静かに二人の話を聞いていると、先ほどから表情がぴくりとも動かないリドルがついに話を切り出した。

「先生、もし…襲撃が止めば、犯人が捕まればいいんですか」
「どういう意味だ?リドル。何かこの襲撃事件について知っているとでも言うのかね?」
「いいえ、ありません。…何も」
「それなら良い…。お行き」

ディペットがそう促すと、リドルはお辞儀をして校長室を出て行ったがその表情は複雑そのものだ。

ハリーも慌てて追うように校長室を出ると、その足はすぐにぴたりと止まってしまった。

「トム。話は終わった?」
「ナマエ。待っててくれたのか」
「まぁね」

リドルが階段を駆け下りると、その先に待っていたのは見間違うはずもない、ナマエだった。

幽霊の時の姿より、少し幼いが美しい顔立ちはそのままだ。
少し眉を下げて心配そうな顔をしている所を見ると、リドルの話し合いが終わるのを待っていたらしい。

リドルは待っていてくれたのが嬉しかったのか、赤い目を細めて笑顔を浮かべるとそのままナマエの頬にキスをした。

それはまるで恋人に送るようなキスで、ハリーなんだかいけないものを見ているような気持ちになった。

「ちょっとトム…。それ恥ずかしいからやめてよ」
「人がいなければいいのか?」
「そういう問題じゃなくて…あー、それでディペット先生はなんて?」
「あぁやはりダメなようだ」

リドルはナマエの手を取り、一緒に動く階段をひょいひょいと下っていく。

ハリーも負けじとついていくと、目の前で階段が動いてしまった。

まずい、離される!

どうしようかとやきもきしていると、先に言ったはずのリドルとナマエは階段を下りた先で止まっていた。
どうやら誰かと話しているようだ。

移動してきた階段に飛び移り、急いで階段をくだるとようやくリドル達に追いついた。

「それで、どうするんだい?その顔を見るとダメだったんだろう」
「正解だ。アブラクサス…だから今日、実行する」

二人を待っていたかのように廊下の壁に寄りかかっていたのは、ドラコにそっくりのプラチナブロンドの男だった。
身長が高く、大人びた顔を見るとドラコの親族かもしれない。

アブラクサスと呼ばれた男を先頭に、軽口を叩きながら再び三人が歩き出すと地下牢への分かれ道の前までやってきて足を止めた。

「それじゃあナマエ、行こうか」
「ちょっまた僕だけ除け者?」

アブラクサスがナマエを自分の方に引き寄せると、それを見ていたリドルは面白くなさそうに二人の間に手で割って入った。

そして不機嫌そうなナマエをなだめるように髪に触れると、さっきとは打って変わってふわりとした笑顔を浮かべた。
その時だけはディペットと話していた時とは違い、年相応の少年に見えた。

「除け者じゃないさ…。ナマエはただ僕の帰りを待っててくれればそれでいいんだ」
「何それ」
「リドルなりにナマエに気を使っているのさ。…さぁ談話室で待っていよう」
「ふぅん?…まぁいいや。トム、先に戻ってるから早く来てね」
「あぁ、すぐ行く」

アブラクサスが背中を押し促すと、不機嫌ながらもナマエの中で諦めがついたようだ。
リドルをその場に残してアブラクサスが先導するようにスリザリン寮があるであろう方へと姿を消した。

二人が廊下の角を曲がるまで、後ろ姿を見送るとリドルは一人真逆の方向、地下牢へと降りて行った。

ハリーもまた、リドルの後を追い音を立てないように気を付けながら地下牢に急いだ。






「さぁナマエ。私の首に腕を回して、連れて行ってあげよう」
「いや歩けるし…」