03


「《…?》」
「どうした」
「《いや、何かに呼ばれたような気がして。…ちょっと気になるから行ってくるね》」
「あぁ、分かった。気を付けろ」
「《幽霊の僕に気を付けろなんていうのセブルスだけだよ。それじゃあ、すぐ戻るから》」


夜も耽り、月が真上に浮かんでいる頃。

城の中がほんの少し騒がしいような気がした。

もう生徒は寝ているはずだし、もしかして侵入者だろうか。

それならば幽霊の自分が偵察に行くしかあるまい、と幽霊の主命とばかりにナマエは地下牢から飛び出した。




静かな城の中でわずかに聞こえる音を頼りに進んでいくと、ようやく騒音の現況を発見した。
ピーブスが夜中だというのに大はしゃぎをして騒いでいる。
よっぽどテンションがあがっているようで、ナマエが姿を見せても気づきもしなかった。

「《ピーブス、どうしたの?》」
「おぉナマエ!生徒が四人、部屋を抜け出したんだ!」
「《なるほど、その四人は?》」
「あっちに行ったぞ」
「《ありがと。シレンシオ(だまれ)。 夜は静かにね》」

騒ぎ立てるピーブスのおかげで絵画達も目を覚ましてしまいそうだ。

半透明の杖で黙らせ呪文をかけると、ピーブズは何かを言いたげに手振り身振りをしていたが構っている暇はない。
ピーブズの言う四人の向かったという方へ行けば、そこは校長が近寄ってはいけないと言っていた例の廊下だった。


なんてことだ。

廊下に姿はない事から、どこかの部屋へ入っているのだろう。
それならば一番最初に確認するべきなのはあの部屋だ。

慌てて三つ頭のフラッフィーが待ち構える部屋へと壁を通り抜けて姿を現せば、案の定抜け出した四人がいたが、まだ入ったばかりらしい。
背後にかまえるフラッフィーには気づいていない。

「ハ、ハリー…!あれ…!」
「何!?」

一人が気づいたようだ。
釣られてハリー達が後ろを向くと、同時にフラッフィーが牙をむいた。

「《プロテゴ(まもれ)》」
「うわぁぁ!?」
「静香!?」
「《早く部屋を出て。今なら誰もいないから》」

ハリー達四人は急いでドアを開けて廊下へとなだれ込んだ。
もう一度ドアを閉めるのも忘れない。

部屋に侵入者が現れた興奮からだろう。
人がいなくなってもフラッフィーの牙が収まる事はない。部屋に残った半透明のナマエに大きく口を開けて牙を突き立てたが、半透明の身体はするりと通り抜けた。

そして焦る事もなく、ナマエも壁を通り抜けて廊下に出ると、四人がバクバクとうるさい心臓を抑えるようにして床にへたり込んでいた。

「た、助かったよ…ありがとうナマエ」
「《全く…、こんな夜中に何してたの?》」
「僕達ドラコの奴に決闘しろって呼び出されたんだ!!」
「《決闘?ふふ、どうやら訳ありみたいだね》」

まさか入学したての一年生で、魔法も大して使えないのに決闘も何もないだろう。

ナマエは笑ったが、ロンはそれが癪に障ったらしい。
ふんとそっぽを向いてる。

「《さぁさぁ今日の事は黙っててあげるから、早く帰りなさい》」
「あの、さっきのは何?」
「《秘密。じゃあ僕も戻るから》」

幽霊でもなんだか眠くなるんだよね、と独り言のように言うとナマエはあくびをしながら宙へ溶けていった。

後にはきらきらした粒子が残り、半透明の幽霊がそこにいた証を残しているようだった。
ハリー達はそのきらきらを不思議に思いながら、グリフィンドール寮へと歩き出した。

*

「《ただいまー》」
「異変はなかったか?」
「《うん。大丈夫。それより眠くなったから戻ってきて早々だけど寝るね》」
「あぁ」
「《セブルスも無理しないようにね。おやすみ》」