孤児院にてn度目


「トム、あそぼ」
「…こっちにくるな」
「えー?」
「…どうしてお前は何回も僕のところにくるんだ」
「どうしてって理由がほしいの?」


しとしとと雨が降るロンドンの町はずれ。

ちんまりと立つ孤児院の一室で、ナマエはリドルにじりじりと近づいて行った。
その顔は一片の悪意もなく、純粋な瞳に心底嫌そうなトムの顔が映している。


リドルはとにかくナマエが苦手だった。
何せ他の子どもと同様に大切なものをとっても、いやがらせをしても、何も変わらないのだ。
怒るわけでもなく、泣くわけでもなく、ただぼんやりしているかニコニコしているのだ。

それが子どもらしくなくてリドルにはとても不気味に思えた。

そして何よりこの毎度行われるやりとりが平行線をたどっているのも気に食わなかった。
だが、どうやら今日は違うらしい。

「あのね、僕もトムと同じふしぎなちからが使えるみたい」
「は」
「見てて」

そう言ってナマエが小さな手を窓へ向けると、勝手に窓は開き、外で雨が降る様子が鮮明にみられるようになった。そして手を振ると、今度は元通りに窓が閉まった。

「ね?」

まさかそんなはずはない。
リドルはどんな仕掛けが窓にしかけられているのかと窓を隈なく確認したが、至って普通の窓だった。

「僕、トムとおそろいで嬉しい」
「お揃い?嬉しい?」
「トムと一緒にいたかったから。トムは僕の事こわくない?」

顔色を伺うように少し悲しそうな顔をすると、ナマエはリドルの手をふわりと包み込んだ。

その手は同じ子どもだというのに、あたたかく、まるで太陽の日差しのようにぽかぽかした気持ちにさせてくれる。

「変な奴だな…お前」
「トムがわらったとこはじめてみた」
「…そうか」

リドルは初めて孤児院にいて良かったと少しだけ思った。
ナマエはリドルの笑みにつられてへにゃりとほほ笑んだ。

後に二人はダンブルドアに出会うのだが、それまで二人の世界は二人きりだった。








「トム、ナマエがごはん食べてあげるね」
「…あぁ、じゃあナマエのは僕が食べてあげよう」
「ニンジン食べてあげたのはないしょだからね!」
「あぁ、僕たちだけの秘密だな」