マルフォイ家のクリスマスパーティーT


「あの!ミョウジ先生、今少しお時間よろしいでしょうか!」
「えっと僕助手だしナマエでいいよ。何かな、マルフォイ」
「ぼ、僕の事ご存知なんですか?」
「まぁ君というかご家族の方をね。似てるから分かったよ」

クリスマス目前の十二月。

冬休みをどう過ごすのかで盛り上がっているのだろう生徒達と挨拶をしながら地下へと向かっていると、初めて聞く声に振り返った。
そこに立っていたのは金髪のスリザリン寮生だった。

一瞬誰だっけ、とも思ったがどこか見覚えのある顔立ちと金髪に、すぐ苗字を思い出した。

ドラコ・マルフォイ。
あのマルフォイ家の一人息子だ。

今まで声はかけずにいたが、「あの、えっと」と少し不安そうにしながらも勇気をもって話かけてくれたあたり何か用事があるのだろう。
話し出すのを待っていると、サッと何かを差し出してきた。

「手紙?」
「あの僕の祖父と父からです。中身はクリスマスパーティーの誘いだと聞いています」
「クリスマスパーティー?」
「はい。毎年屋敷でやるのです。先生はその、知り合いなんですか?」
「うーん、まぁそうだね。知り合いかな…」
「じゃ、じゃあ是非来て下さい!二人とも楽しみにしてるんです!」
「ふふ、分かった。たぶん大丈夫だと思う」
「本当ですか!」
「うん。クリスマス、お邪魔するね」
「楽しみにしています!」

マルフォイは白い肌を少しだけ赤く染めて、そそくさと廊下を去ってしまった。
アブラクサス、ルシウスには似ずうぶな子らしい。


部屋に戻って手紙をひっくり返すと、たしかに手紙にはマルフォイ家のシーリングスタンプが押されている。

そっと開けると、クリスマスパーティーへの招待状が二通入っていた。
きっとアブラクサスとルシウスが譲らず書いた物を両方入れたのだろう。

相変わらずのマルフォイ家に、笑いながら同意の手紙を書くと梟小屋からすぐに返事を送り返した。

久々に同世代の人に会うのも悪くないだろう。

それに身体が戻って初めてのクリスマスだ。
ワクワクしないはずがない。










「うぅ…気持ち悪い…」

ナマエは会場のダンスホールに入ると、壁に寄りかかってキュッとしめられたネクタイを思いっきり緩めた。
少しだけ首元が開くと、気持ちにも余裕ができる。
せわしなく目の前を行ったり来たりする人達を見て、ナマエは大きく息を吐いた。




マルフォイ家のクリスマスパーティーは想像よりも何倍も盛大なものだった。

きらびやかに飾り付けられた豪華絢爛のダンスホールには、多くの魔法使いたちが集まっている。
優雅なオーケストラに合わせて、皆一様に談笑している。
きっとこの場はクリスマスパーティー以外にも、人脈を作る場として活用されているのだろう。
ちらほらとどこかで見たような顔が多くいる。


そんな人混みの中で、しばらくホグワーツから出ていないナマエは見事に酔ってしまったのだ。
何せ大広間での食事は皆動き回ったりしない。

「ナマエ先生!」
「あ、マルフォイ。メリークリスマス」

壁に寄りかかっていると、やってきたのはドラコだった。
金髪をいつも通りオールバックにして、貴族の子どもらしくきっちりスーツを着ている。

「それカッコいいね。似合ってるよ」
「先生もすごくかっこいいです!普段とは印象が違いますね」
「そりゃいつも学生服だからね」
「それより先生、おじい様と父上が探していましたよ!」
「あ、本当?」

へらへらと笑えば、ドラコは呆れたような顔をしていた。

クリスマスパーティーの主催者に挨拶をするなど当然なのだが、いかんせん旧知の仲だ。後でもいいと思っていたが、ドラコにとってはそうではないらしい。

「あ、ちょっと待って。いる大体の場所教えてもらえば自分で行くよ」
「え?」
「ドラコはこれ、一旦自分の部屋に置いてきな。クリスマスプレゼント」

スーツのポケットから小さな小箱を取り出すと、そっとドラコの手のひらに乗せた。
ポケットに入れていたが、ラッピングはちゃんと綺麗なままだ。

「中身は後でのお楽しみって事で」
「あ、ありがとうございます!おじい様達はあそこで…囲まれてますね」
「分かった。ありがとうな」

ドラコが指さしたのは最も近づきたくないと思っていた人混みだった。
人が数人捌けたと思えば、またその囲いに人が増えるのだ。

これからそこに向かわねばならないと思うとより一層気分も悪くなるが、わざわざ呼びに来てくれたドラコの手前行かないわけにもいかないだろう。

重い腰をあげて近づいてみると、案の定奥をうかがい知る事はできなかった。