もしも炎のゴブレットの舞踏会に出たら


▼もしも「きらきらひかる」の元幽霊の少年が炎のゴブレットの舞踏会で女装したら
※女装ネタ注意
--

「な、なんの冗談だね」
「え?似合ってない?結構傑作だと思ったんだけど」
「いや…その逆だ」
「え?似合いすぎ?」
「違和感がなさすぎるという意味だ」

滅多に行われる事のないホグワーツ城での舞踏会に、教師も生徒達も皆が高揚した気持ちで踊っていた。
代表者達のダンスも終わり、今はもう各々自由に過ごしている。
その中でスネイプは今日も今日とて相変わらず育ち過ぎた蝙蝠のような黒いローブで大広間の壁に寄りかかっていた。相も変らぬその黒さは煌びやかな大広間の中では一層目立つ。普段の行いもあってか彼に近寄る者は一人もいなかった。

のだが、そこに青空のような美しい青がピタリと寄り添った。
肩幅をごまかすためにふんわりとしたショールを羽織り、ふんわりと広がるスカートが幼い雰囲気を醸し出している。
パッと見は育ちのいいお嬢様のようだが、スネイプの隣に来る人間はホグワーツ城ではあの元幽霊の少年ただ一人なのだ。

つまり女装をした彼がスネイプの腕を勝手に組んでニコニコしているのだ。

「何故髪が伸びている…」
「薬!怪しげな通販で買った」
「馬鹿者が。副作用でもあったらどうするのだ!」
「痛い!女の子に暴力ふるうなよ!」
「お前は男だろう」
「今は女の子だもーん」

スネイプは一瞬頭を叩くのをためらったが、女装をしても変わらないと頭をはたいた。

だが贔屓目なしにしても今の彼は完全に女子だった。
元々中性的な顔をしていると思っていたが、髪が伸び薄っすらと化粧もしているのだろうか。このパーティー会場にいる誰よりも美しく見えてしまう。

現に壁際にいるだけで生徒達がひそひそと噂話をしているようだ。
三割くらいはスネイプの影響でもあるのだが、それは二人とも気が付かない。

「ね、セブルス」
「はぁ…どうせ踊れとでも言うのだろう」
「えっなんで分かったの」
「我輩が何年お前と一緒にいると思っているのだ」
「…おぉ」
「一曲だけだぞ。踊ったらさっさと部屋に戻る」
「っうん!嬉しい!ありがとう!!」

少し嫌そうな顔をしていたが、スネイプが手を差し出すと答えるように満面の笑みで手を重ねた。
きっとスネイプは踊る事など本当にしたくないのだろう。
だが気持ちを汲み取って、苦手な事をしてくれるのだから彼にとってはその事が心底嬉しかった。

手を引かれ、優雅なメロディに合わせて軽やかにステップを踏むと、あたりには生徒や教師たちがいるはずなのに彼の目にはスネイプだけしか映らなかった。
触れ合った肌からじわじわと侵すような熱が身体の中を駆け巡り、頬はメイクなどせずとも薔薇色に染まる。

「セブルスとこんな風に踊れるなんて夢みたいだよ。嬉しくて死にそう」
「フッ死んだらまた我輩の背後霊にでもなればいい」
「そうだねぇ。それなら死んだ後も安心だ」

あぁ嬉しすぎて本当に涙が出そうだ。
踊っている事も、いつも通りの軽口も何もかもがまるで夢のようで、きっとこれはこの一夜だけに限られた魔法のようなものなのだろう。

夢心地で踊った一曲は、あっという間の短さで青い少女とスネイプは曲が終わると同時に大広間を後にした。




「号外!号外だー!スネイプが美女とダンスを踊ったらしい!!」
「ボーバトンの生徒らしい」
「俺はホグワーツの六年生だって聞いたぞ」
「あんな子がいたら気づかないはずないんだけどな…」

「最近あの青い少女は誰なのだと聞かれて我輩は大変な目にあっているのだが」
「でも可愛かったでしょ?なんならたまに女装して歩いてみようかな〜」
「やめたまえ」