07


「《メリークリスマス、セブルス》」
「…メリークリスマス、ナマエ。ずいぶん楽しそうだな」
「《へへ、セブルスからのプレゼントが嬉しくて》」

時はたち、クリスマス当日。

ナマエは朝からこれでもかというくらいにニヤニヤしていた。
スネイプの私室の端っこに置かれた、真新しい黒のデスクとイスに頬ずりをするようにくっついている。

そのデスクとイスはスネイプからナマエへのクリスマスプレゼントだ。

「《ねぇ本当にいいの?》」
「あぁ」
「《置く場所ないからってここに鍋置いちゃだめだよ?》」
「置かない」
「《本当に》」
「しつこいぞ」
「《えへへ》」

魔法でイスをひくと、まるで生きていた頃かのように席に座り、机の上に幽霊だというのに生徒が送ってくれたプレゼントを大切に置いた。

幽霊になってから持ち運べるような軽いものはもらった事はあったが、こうした大きな家具のようなものはもらった事がなかったのだ。嬉しくないわけがない。

生徒にもらったプレゼントを置けば、ナマエなりの大きな宝箱の完成だ。
机を見てニヤニヤ。ふふふと笑いをこぼしている。

そんな姿を見て、こうしてみれば身体が透けている以外は普通の生徒となんら変わりないなとスネイプは笑った。

「《久々にイスに座った!》」
「いつも浮いてるからな」
「《うん。なんだかここにいてもいいって思えるよ。ありがとう、セブルス》」
「フン。いつも図々しく吾輩の部屋にいるではないか」
「《そうなんだけど!自分の机とイスがあるっていうだけでなんか違うんだよね》」

だからありがとう。

ゆるゆるの締まりのない顔でそう言うと、スネイプは素っ気なく魔法薬の作成に戻ってしまったがその手に持っていた魔法薬の材料はナマエがプレゼントにと育てた数々の植物だった。


*


「《よし、クリスマスプレゼントを開けよう》」

セブルスの邪魔にならないようにと、ナマエはもらったばかりの机で一人クリスマスプレゼントを開ける事にした。
触れる事はできないので、魔法で綺麗なラッピングをそっと剥がしていく。

双子からの悪戯グッズに、ハーマイオニーからは読んだ事のない本。
ハリーとロンからはチェスボードだ。

それぞれが幽霊の身体でも楽しめるように工夫をしてくれたのだろう。
皆が悩んでいる所を想像するとなんだか幸せな気分だ。

後でお礼をしなきゃと名前を書き留めていると、まだ開けていない黒い箱が目についた。

はてさて誰が送ってきてくれたのかと箱を開けてみたが、プレゼントにはメッセージカードが入っていない。

「《?》」

もしかしたらカードを入れ忘れたのかも。

恐々とできるだけ丁寧に箱を開いていくと、指先を透明の何かが通り抜けた。
もう少し開き進めてみると、中には小さなガラスドームが入っている。
だが、普通のガラスドームではなく、魔法でできているのかガラスドームの中には赤い薔薇が一輪立っていた。

薔薇はまだ蕾で、きっとこれから咲くのだろう。

『静香には赤い薔薇が似合うね』
『トムの方が似合うよ。ほら、赤い瞳とお揃い』

赤い薔薇を見ていると、ぼんやりとだがまだ体が透けていない、生前の自分が目に浮かんできた。

隣には黒髪で赤い、随分と顔の整った少年が赤い薔薇を持っている。
静香とトムと呼ばれた少年は赤い薔薇をお互いに手渡すと、お互いを笑っていた。



「…ナマエ、どうした?ナマエ?」
「《…あれ、セブルスどうしたの?》」

気が付くと目の前には普段は見ない、心配したようなスネイプが立っていた。

あのガラスドームをもらってから随分時間がたってしまったのだろう。
長時間混ぜるはずの魔法薬の調合はひと段落ついたようだ。

「…次の手伝いを頼もうと思っていたのだが」
「《ごめんごめん。昔の事をちょっと思い出してたんだ》」
「何?記憶が戻ったのか?」
「《ちょっとだけね》」

トムという名前が分かれば、少しは自分の事についても分かるだろう。

後日図書館に行く事を心に決めて、スネイプのかき混ぜる鍋に魔法薬の材料を投下した。