優しい君が好き


「勝己ー!久しぶりー」
「誰だ?」
「えぇ!?」

体育の授業から真っ先に教室に戻ると、爆豪の席に誰だか知らない男が座っていた。
その男はぽかんとしてる爆豪を見て、屈託のない笑顔でフレンドリーに話しかけてきた。が、一瞬でそれは驚きの表情に変わった。
誰だか知らねぇけどイケメンでイラつく。爆破するか。と手のひらにニトロをためると、知らない男は席を離れるとすぐ目の前までやってきた。


「俺だよ、ナマエ!!一緒に遊んだの覚えてない?」
「ナマエ?お前が?」
「そうだよ!!ミョウジナマエ!!」


ナマエ、と聞いて爆豪の中に出てきたのは王子様のような見た目をしている1つ上の兄貴分的存在だった。
幼い爆豪に、あれやこれやと世話を焼き遊んでいたナマエとは中学生になってからめっきり会わなくなっていたのだが、こんな気が抜けるような奴だっただろうか。脳内のナマエと比較してみるものの、似ているのなんて顔くらいだ。


「俺は勝己に会えてこんなに嬉しかったのにさ」


爆豪が嫌みなくらい整った顔をじっと見つめていると、突如背後から腰回りに細い手がぎゅっと回ってきた。バッと後ろを振り向くと、さっきまで目の前にいた彼は背後から楽しそうに笑いながら、ずしりと体重をかけてきた。そういえばナマエも、こいつみたいな瞬間移動の個性だったとおぼろげな記憶を呼び戻すと、そういえば前からこんな奴だったかもしれないと妙に納得した。


「本当にナマエなのか?」
「そうだよ!しかもな・ん・と俺勝己の先輩なんだよ。ヒーロー科」
「ハッお前がヒーロー科なんて世も末だな」
「えぇー?俺強いよ!なんてったって勝己の背後もすぐ取れるし」


ふふんと鼻をならすナマエに、爆豪は不思議とイラつかなかった。
思い返せば昔からこんなふざけたような奴だったが、ヒーローとしての能力は高かった。瞬間移動の個性で、爆豪が勝った事は一度もない。むしろいつも背後を取られてこうして遊ばれている事ばかりだった。しかし、昔からそれは別段嫌な事ではなく、むしろ久々に再会した事もあって、今はこのおふざけたも懐かしく思える。
腕を振りほどく事をせず、後ろを振り向くととろけたような笑顔が思ったよりもすぐ傍にあった。

「あ」
「ん?あれ?勝己君のクラスメイト?」
「ば、爆豪…」

爆豪がフリーズしていると、ナマエの問いかけでようやくドアの隙間から切島がこちらを伺うように見ている事に気がついた。ばっちり切島と爆豪の目が合うと、切島はわなわなと肩をふるわせて廊下に向かって大声で叫んだ。

「み、皆来てくれー!!爆豪が!!」
「ばっクソ髪叫ぶな!!」
「あはは、元気でいいね」

年寄り臭い事を言うナマエに、空いている手で軽く叩くと「痛いなぁ」とまた気の抜けた声があがる。

「良くねぇ!離れろ!!」
「あら、本当にイケメンに抱きつかれてるわ。羨ましいわね爆豪ちゃん」
「この方はどなたですの?」
「ありゃ、見つかっちゃった。ごめんね勝己」
「ごめんねじゃねぇぇ」

とやかく言っている間に結局女子連中を筆頭にクラスメイトが戻ってきた。
相変わらずナマエは背後に引っ付いて離れない。腕は細く、一見弱そうな見た目だがやはりヒーロー科というだけあって爆豪を拘束する力は強い。

「そんなに見られたくなかったら爆破すればいいのに」
「あ?」
「勝己って本当に優しいよねぇ」


あはは、と笑いながら爆豪を離そうとしないナマエに、クラスメイト達はドキドキだった。何せクソを下水で煮込んだような性格と称される爆豪だ。いつキレて暴れだすか分からない。いい加減引きはがした方がいいのだろうかと気をもみ始める頃。ナマエはそっと爆豪にだけ聞こえるように囁いた。

「でも俺、そういう優しい勝己が好きだよ」

ボンッ
クラスメイト達が心配していた爆発が、爆豪の手ではなく赤く染まった顔から起きるとはその時は誰も思っていなかった。


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「あ、ナマエ兄ちゃん!?」
「出久だ!久しぶりー!俺ね、勝己と出久の先輩なんだよ」
「え!?」

「この方はどなたですの?」
「俺は2個上のヒーロー科、ミョウジナマエだよ。よろしくー。個性は瞬間移動です」


「爆豪ちゃんとミョウジ先輩ってそういう関係なのかしら?」
「いやいやそりゃ無いっしょ」
「でも爆豪さんも黙ってればイケメンですから絵面は持ちますわね」
「「「うーん気になる…」」」