こじらせ勘違い


「ねえちゃん!」
「なぁに電気」
「俺ねえちゃんのことすきー!」
「お姉ちゃんも電気の事大好きよ」

そう言って姉ちゃんはいつものように微笑むと、ギュッとやわい体に抱きしめられた。のは当の昔の出来事である。子どもの頃俺はかなり手のかかる子どもだったらしく、お目付役として一緒に遊んでくれたのが姉ちゃんだった。姉ちゃんは俺より少し年上で、優しくて可愛い。周りからは本当の兄弟のようだと言われたが、俺が姉ちゃんをただの姉ちゃんとして見られなくなったのはいつからだっただろうか。

「ナマエちゃん好きだよ」
「ありがとう電気」

だけど高校生になった今でも関係性は特に変わっていない。何せいくら俺が好きだと言っても、ナマエちゃんは冗談として受け流している。きっと俺の軽そうなイメージっていうのも邪魔をしているに違いない!けどここぞと言う時に勇気が出ない。切島ならきっと男らしくねぇ!って言うな、絶対。



今日もモヤモヤした気持ちを抱えて授業を終え外に出ると、少し離れた所を歩く見慣れた姿を見つけた。離れてても分かる、ナマエちゃんだ。だけど隣にいるあの男は誰だろう。…まさか。一瞬最悪の想定をしてしまったが、いやそんな事は…ないとは言い切れない。焦る気持ちを抑えて、俺はナマエちゃんと男の後ろを追うように一定の距離を保ちながら歩いていく事にした。


しばらく歩いていると、2人は公園に寄り道をするらしい。
こっそりと茂みに隠れて様子を伺っていると、2人はベンチに座り、男がナマエちゃんに何かを言ったかと思えば、どこかへ行ってしまった。
もう出て行っても大丈夫かと茂みから出ていくと、気のせいかいつもはしゃんとしているナマエちゃんの背中が小さく見えた。


「ナマエちゃん!」
「!電気、偶然だね…っ」
「こんな所でどした?泣いてるの?」


振り返ったナマエちゃんは泣いていた。ハラハラと涙を流す目はこすったのか腫れている。
原因はもしかしなくてもさっきの男だろう。名前も知らない男にイラッとしたが、泣いているナマエちゃんを見ていたらそれどころじゃなかった。


「誰に泣かされたん?」
「違うよ。私が勝手に泣いてただけ」
「…ナマエちゃんて嘘つく時絶対目合わせてくれないんだよ、気付いてた?」


ベンチに座るナマエちゃんの前に片膝をついて、目を見るとやはり俺とは目を合わせてくれなかった。ナマエちゃん自身はやっぱり嘘をついた時の自分の癖に気付いてなかったみたいで、俺の指摘に驚いていた。


「なぁ、俺ナマエちゃんが好きだよ」
「いつものね。私もだよ、電気」
「違ぇよ。そういうつもりで言ったんじゃない」

驚くほどするりと出た本音の反面、どこかで冷静な頭が弱みにつけこむ形になってしまったとちょっと後悔していた。
けどいつもの冗談のように思われているし、そうも思ってはいられない。俺の言葉が冗談じゃない事を、今ここで言うしかない。あんな男にナマエちゃんを取られてたまるか。

そう意気込んだ瞬間ナマエちゃんのポケットから、通話を知らせる着信音が流れてきた。なんてタイミングの悪い携帯だ。一世一代の俺の告白を邪魔しやがって。もうとやかく考えるのはやめた!俺は勢いに任せて携帯を取ろうとしていた驚くほど細い手を取って、泣きはらしたナマエちゃんの目を見つめた。


「俺、ナマエちゃんが好きだ!昔からずっと。ナマエちゃんが俺の事を弟みたいに思ってても」
「電気」
「俺ならナマエちゃんをこんな風に泣かせないから」


言ってしまった。けど不思議と後悔はもうない。
公園には驚いた顔のナマエちゃんと、顔が赤いであろう俺と無遠慮に響く携帯の音だけになった。


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「…電気、もしかして勘違いしてない?」
「え?」
「さっきの、彼氏とかじゃないよ」
「…嘘!?!?」
「本当。でもさっきの電気、かっこよかったよ」