緑谷出久と招き猫


運を操る女の子。
通称招き猫。

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雄英高校ヒーロー科。そこは言わずと知れた未来のヒーローの卵達が在籍するエリートクラスである。
当然クラスを構成するメンバーもキャラが濃い人達が自然と集まっているわけだが、その中に彼女、ミョウジナマエは普通科にも関わらずかなり馴染んでいた。

「緑谷。分からない所あったから教えて」
「うん。僕で良かったら」
「緑谷がいいから緑谷に言ったんだよ」

昼休みになると、ナマエは時々ノートとお弁当を持ってやってくる。緑谷に勉強を教えてもらうのはよくある事だった。ナマエはいつも眠そうな表情を浮かべている、どこかアンニュイな雰囲気を持つ女子としてヒーロー科A組から認識されていた。けれど実際に話してみると、自然とこうした口説き文句のような言葉を言う天然でもある事を理解している。

そして今日も意識もせずに言った一言に緑谷の体温はぼっと急上昇した。赤くなっているであろう顔を慌てて隠すと、ナマエは赤くなった緑谷に全く触れずに緑谷の前の席を借りるとノートを広げた。

「ごめんね。毎回」
「全然いいよ。えーっと、この問題は引っ掛けだよ。こっちの公式を使って解いてみて」
「分かった」

ノートには数学の問題と数式が並んでいて、応用問題で躓いてたようだ。簡単に解き方を教えると、ノートに向かって一生懸命考えている。
最初はあまりにも表情が変わらなくて何を考えているのか分からなかったけど、考えている時のミョウジさんは眉間に皺がよる。こうして見るとすごく分かりやすいなぁ、と緑谷は思う。

「……緑谷、そんなに見られると恥ずかしいんだけど」
「えぇ?! あ、ごめん!えっと問題は解けた?」
「うん。確認お願いします」
「えーっと…、よし、正解! 飲み込みが早いね。すごいよ」

赤ペンで答えに花マルを付けると、目じりを下げて微笑むナマエに緑谷は時間が止まったかのような錯覚に陥った。

猫だ。今物凄く猫っぽいぞミョウジさん…!


「緑谷」
「え?」
「…手」


手?


「ん?」

ナマエに言われてようやく意識が戻った緑谷はハッとした。指先に触れた事もないような滑らかな感覚があった。自分の手を視線で辿ると緑谷の手はナマエの頭を無意識に撫でていたようでピシッと体が固まったように動けなくなってしまった。

無意識に一体何をしてたんだ僕!? でも恥ずかしそうな顔をしているミョウジさんもレアだ…。今日はすごくいい日かもしれない。

とまたブツブツと自分の世界に入りかけた所で、教室の四方八方からビシバシと痛い視線が飛んできた。パッと手を離すと幾分か視線は和らいだものの人を殺しそうな視線は残っている。


「ごめん!つい無意識で」
「や、いい。…悪くない」
「え、」


いつの間にか騒がしかったクラスがしんと静まり返っていた。視線をズラすと他のクラスメイト全員がガン見している。その異常な空気の中、ナマエは小さな声で呟いて、緑谷の固まった手のひらを頭でつついた。それはまるでもっと撫でてくれと言った猫のようで。


「花丸取ったらまたやってくれる?」

「花マルなら俺がいくらでもやる。そして撫でさせろ」
「半分ヤローは引っ込んでろ俺がやる」
「爆豪ちゃんは爆破しそうで怖いわ」
「んだとカエル女ァ!!!!」

あぁ、また始まった。どこか遠い目をしてしまうのも、仕方のない事だと思う。喧嘩を始めようとする爆豪と轟、そこに女子も入り乱れ、ナマエの頭を撫でる権利を主張し始めた。本人はそんなことは知らぬと言ったように、ぼーっと乱闘騒ぎを見つめている。

「模擬訓練?」
「ミョウジさんは気にしなくていいよ。それよりそろそろお昼食べよっか」


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(緑谷今日もありがとう。お礼する)
(え!? いいよ僕も復習できて良かったし)
(私がしたいだけだから。緑谷に幸あれ)
((ミョウジさんの運を操作する招き猫ポーズ…レアだ! ))

(出久おかえり! 今日は出久の好きなカツ丼よ)
(本当!? やった)
(後ね…じゃーん! 数量限定オールマイトグッズ! 買えちゃったのよ!)
(えぇー!? お母さんすごい!! )

(…あれ?これってミョウジさんのおかげ、なのかなぁ)