美しき男


美しさは罪だと言ったのは誰だっただろうか。
俺はその人に言いたい。
美しさは罰なのだと。

生まれてからずっとこの身、いやこの顔はまさに美を背負っていると言っても過言ではない。
金持ちで美男美女という完璧な両親から三男として生まれた俺は、兄弟の中でも群を抜いて見た目が良かった。二人の美しさを凝縮して高めたような、生まれるべくして生まれた存在だった。美しさには期待されていたのだが、更にそれを上回ったのだから可愛がられないはずがない。

子どもの頃から今までずっとありとあらゆる言葉で飾り立てられてきた。

花顔玉容
もの言う花
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花

もうここらへんは聞きあきた言葉だ。
皆が皆同じ事を言うようなものだからいい加減耳にタコという奴である。

おまけに金もあるものだから、見た目にも着飾られていた訳だ。
はたから見れば見た目もお家柄も優れ、なんて完璧な人生だと思うかもしれない。だがそうとも限らないのは実際俺の身になってみないと分からない事だろう。

美しさを身に宿した側からすれば美とは罰なのだ。
逆に美を持たない者からすれば美しさは罪と言えるのだろう。
そして美というのも度を過ぎると毒と同じだ。
人を惑わし、正気でいられなくする。

子どもである俺を襲おうとする輩が沸くのは日常茶飯事であったし、誘拐監禁もそれなりに体験してしまった。
どれもこれもどうにか自力で脱出したり、他人の手を借りて切り抜けてきたが両親には心配ばかりかけさせていた事は違いない。結果護衛なんて立派なものまで付くしまいだ。(護衛も途中で気がおかしくなってしまう奴がいたが)

きっとこの美しさというのもきっと子ども特有のものだろう。そう思って耐えていたが、日に日に増していく美しさには絶望した日もあった。

そして青年になってもやはり美しかった俺は、辟易とした。
まるで宝石のように大事に大事に美しく着飾られて、守られるだけの甘言だらけの毎日が。
それは人というより物として扱われている様な、そんな気がしたのだ。

そんな生活に嫌気がさした俺は大胆にも家出をした後、軍に志願した。
軍に入ればまずい飯でも食いっぱぐれる事はないし、もしかしたら戦争の中で死ぬかもしれないなんて不謹慎な願望を持って。

ただそこで俺は出会ってしまったのだ。

「顔?なんだ、お前は綺麗だって言われたいのか?言って欲しいならいくらでも言うがな。お前の顔は顔でしかないぞ。鼻と目と口。後眉毛がついてる。それで満足か?」

フンッと冷笑を浮かべるあの男に。