Innocence


アレアキ/D灰


【アレアキちゃん】
誰が想像できただろうか。何か軽い衝撃と重みが伝わり閉じた目を開けるとそこにいたのは、
「あれんくん!おはよ〜!」
少女だ。こちらに笑いかけるその表情は幼いながらもよく知っているによく似ている。この笑顔は、
「アキ!?」
慌てて入ってきたリナリーによって自分の考えが間違ってなかったことを知った。

「原因不明?」
朝食を取りつつ話をしようということとなり
「そうなのよ、いつもアキが起きる時間になっても起きないからどうしたのかなって様子を見に行ったら」
こうなっていた、ということか。
幼いアキは向かいに座るリナリーの横ではなく、自分の横に座ってホットケーキを頬張っている。とても美味しそうに食べる様子は変わらないのだとどこかでそんなことを思った。
「アキ、美味しい?」
「うん!」
嬉しげにしている横で自分も朝食を食べ進める。
室長の発明絡みをまず疑ったのはリナリーも同じようで真っ先にそれを確認したようだが、それも違ったらしい。他に何か原因となる事項が思い当たらない。一体何が彼女をー、

「あれんくん、あれんくん」
呼びかけられて、そちらを見るとアキはホットケーキがフォークを差し出している。
「あーん」
なるほど、そういうことですか。少女の姿とはいえアキはアキだ。気恥ずかしさがなかったといえば嘘になる。
が、純粋な眼差しを向けられてはどうもできまい。
「美味しいですね。アキ、ありがとうございます」
お礼にとみたらし団子を差し出せばこれまた嬉しそうに食べた。口元についたたれを拭ってやってるとリナリーがぼそりと呟いた。
「……もとに戻ったときアキが知ったら大変なことになるわね」
それには心の中で同意した。


数時間後。
やることを一段落させたアレンはアキらを探していた。
二人で原因探しに行ったがそれは果たしてどうなったのだろうか。
「アレンくん!」
考え事をしているとその主らの声が聞こえた。思考のために下にしていた視線を上に戻せばリナリーとアキの姿がみえた。アレンが見えたことにアキはぱぁと表情を明るくさせ、こちらに駆け寄ってきた。腕を広げてみればそこに飛び込むような形になり、そのまま抱きつくのかと思いきや違った。アキが選んだのは腕の中ではなく、アレンの手だった。小さな手で両手を包むように握っている。もちろん包み込みきれずにだいぶはみ出てはいるのだが。そのまま嬉しげににこにこしている様子にぎゅっと何かが締め付けられた。

「リナリー!!」
「え、何??」
「この子は僕が守りますから安心してください!!」
「守るも何も先にもとの姿に戻すことが先でしょう!?」

ツッコミ総スルーで勢いのまま抱きしめるとアキが照れくさそうに笑うのがわかった。何だこの守りたい笑顔。そうかこれが母性と呼ばれるものなのか。

「納得顔のところ申し訳ないけどアキが眠たそうにしているわよ」
「え?さっき笑っていましたよね?」

そういいいいつつ確認しようとおろしてみると、確かに。うっつらうっつら船を漕いでいる。眠さを全面に出した仕草だ。リナリーとあちこち歩き回って疲れてしまったのだろうか。
自分たちとの会話で眠くないと主張したいのか何度も目をこするもやはり眠さは解消されなかったようで。

「ちょっとアキを寝かしつけてきます」
「わたしそんなこどもじゃないもん」
「いいじゃないアキ。特権よ。じゃあ、アレンくんあとよろしくね」

そういってどこかへ向かっていった。原因探しを再開するのだろう。ばいばいと眠い目こすりながら手を降るアキも曲がり角で姿が見えなくなったた途端、電池切れのように動きが止まった。聞こえてきたのは寝息。子供とはこんなに展開が早いのだろうか。負担が少なくなるよう抱き直し、談話室へと向かった。

ソファにと寝かし、借りてきたタオルケットをかけてやる。様子は変わらず、すやすやと気持ちよさそうに寝ている。談話室には人気がなく、自分たちしかいない。横で本を読み進めているとうぅ、と小さく声がした。見やれば眉間にしわを寄せている。嫌な夢でも見ているのだろうか。
「大丈夫ですよ、僕が守りますから」
小さく言いながら頭をなでると眉間のそれは消えた。安心したような表情になったのはアレンの希望的観測だったかもしれない。それにしても、人の寝顔をみるというのは、こちらもつられて、眠くー。

なんだか、長い夢を見ていたような気がする。眠い目をこすりながらアキはそんなことを思った。朝きちんと起きたと思っていたのにそんなこともなかったかのように、一日の記憶がまるでない。こんなに肩がこるなんてことあったっけ?と肩の重みと視界のすみにとらえた白に疑問をいだきつつみやれば、

「え?!?」
「あ!!!アキ!!戻ったのね!!!」

アレンが自分の肩によりかかるように寝てたかと思えばリナリーの安心しきったような声も聞こえる。というか、戻ったってどういうことなの?

「戻ってよかったですね」

いつのまにか起きたアレンからもそういわれ、脳内で?マークが飛び交う。私は何か問題でも起こしたのだろうか??

「ねぇ、私何か変だったの?」
「内緒!」「さぁ、どうでしょう」

思い切ってそう尋ねるとアレンとリナリーは顔を見合わせたあとそう言った。表情は二人とも似たようなものである。

とりあえずシャワーだけでも浴びに行こうと立ち上がろうとしたときアレンに腕を掴まれる。
どうしたのかと問う前にアキ、と名前を呼ばれる。

「どんなアキでも僕が守りますからね」


『だからどうか、前に見せたような無邪気な笑顔で僕の名前を呼んでほしい』

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