始まりだした世界


家族が死んでしまった、らしい。真っ先の浮かんだのはこれからどうしようとか、お金はどうしよう、という気持ちだった。悲しいとか怒りとか、そんな感情が全く浮かんでこなかった。あぁ、私はこんな人間だったか?なんて考えながら、私はただその場に佇んでいた。
近界民、というバケモノが襲ってきて、その混乱に巻き込まれて瓦礫の下敷になってしまった。と誰かから聞いた。始めはどうしたら良いか分からず、塞ぎ込んでいたが、それからは生きる為にがむしゃらに働いた。祖父母もおらず、両親も一人っ子だった為、天涯孤独となってしまった私には引き取ってくれる人もいないし、他人と暮らすなんて嫌だったので、働く事にした。私は10歳だったから普通の店では雇ってはもらえないが、所謂スナックや風俗店などの裏方としてバイトをした。生きる為になんでもした。お店の人はみんな優しく、お客さん達も良い人たちばかりだった。賄いを貰ったり、ちゃんと給料を払ってくれたり。其れでもなんの感情も浮かばない。こういう奴のことを冷たい、と言うのだろうなとどこか他人事のように考えていた。所詮は他人である。
働いて、働いて、1年くらい経っただろうか?しかしまあ、10歳の小娘1人が不眠不休で働いたって限界は来る。手っ取り早く金を稼ぐ方法はないだろうか。悩んでいた私に店のお客さんが持ちかけたのは、ボーダーに入らないか、という事だった。ボーダーとは、分かりやすく言えば対近界民用の組織である。上に行くほど給料は良くなるらしい。これは入らない手はない、と思うが私の対人関係はお世辞にも良いとは言えない。人の気持ち?何それ美味しいの?レベルである。
そうして店の人達に死ぬ程心配されながら面接に行った。
まぁなんとかなるさ。
 

 
結果的に、ボーダーには入れた。
入れはしたが、ボーダーに入ってからすぐに給料なんて貰えるものではなく、無給の訓練生として過ごしていた。勿論バイトは続けている。
相も変わらず、人の事は理解できない。そうして、只々同じ日々を過ごし、詰まらないな、と思っていた時だった。


「お前、俺の隊に入らないか?」


その時は、個人ランク戦をしている時だった。いきなり言われたその言葉を理解できずに固まった私にその人は、

「お前の才能が欲しい。俺の手をとれ!」

そう言って皮肉気に笑うその人に、私は、

「私、チームプレイなんて出来ない」
「お前がチームプレイする必要は無い。俺たちがお前に合わせる」
「私で、いいの…?」
「お前が良いんだ」

わたしは、


(結局その人の手を取った私には、周りの反応なんて見えていなかった)
(これが、六花隊隊長、六花遥陽との出会いだった)








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