※「うそつき」より前のお話

総司に鍵を渡した数日後、果たして総司はやってきた。

「ね、相手して? 今日僕、暇になっちゃった」

言う事が相変わらず可愛くねぇが、総司が来た事が嬉しかった。

「俺はやる事があんだよ、少し待ってろ」

そう言ったが、すぐに座ってる俺の首筋に抱きついてくる。

「そっちを後にしてよ、僕のが先」
「はぁ?何言ってやがんだ、仕事が先に決まってんだろ」

口ではそう言ってみたものの仕事なんて手に付きそうになく、間髪入れずに総司が俺を服の上から触ったりするもんだから、結局総司の相手をするのが先になった。
やり始めたらダメだった。最初の時より夢中で貪る。
総司の荒い息が耳元に掛かり、ふと総司の顔を見ると熱っぽい視線と上気した頬が俺を余計に熱くさせた。

「はっ、あ……もぅだめっ」

今日何度目かの総司の吐精。もう陽は随分と傾いていた。
はぁはぁと息を整えながら、総司が口を開く。

「ねぇ、もう終わり? 僕まだしたいな?」
「馬鹿言ってんじゃねぇよ、今ので何回目だと思ってんだ」
「ふぅん、やっぱり年には勝てないの?」

そう言って誘ってくる総司を、俺と向き合う形で机に乗せた。

「てめぇこそ、毎日遊んでて体力持つのか? 明日の俺の講義、サボりやがったらただじゃおかねぇぞ」
「へぇ、ただじゃおかないって、僕に何するの?」

くすくすと笑う総司に、遠慮無く俺を挿入した。

「あっ……! 何だ先生、まだ元気だね」

奥まで挿れてから止まった俺に、総司は嬉しそうに言ってくる。
まだ沈みきらない夕陽に照らされ、総司の目が潤んで見えて……思わずキスをしちまった。
優しく舌を差し入れ、口内を味わう。絡まる舌が柔らかくて甘い。
歯をなぞり、焦らしてからまた舌を絡めた。すると総司の下の口が俺自身をきゅ、と締め付ける。
総司から口を離すと、総司が頬を膨らませて言った。

「ズルイんだ」
「あ? 何がズルイってんだよ」
「キスまで上手いなんて、ズルイ」
「何だ、キスだけで感じちまったのか?」
「うん」
「てめぇ遊んでんじゃねぇのかよ、キスなんて慣れてんだろ?」
「だってこんな上手い人、今迄いなかったもん」

可愛い事を言いやがる。

「へぇ、ならキスだけでイかせてやるよ」

それから激しく口付けた。
与えては奪い、時に甘く優しくしてはまた貪るように味わう。
俺のキスに必死についてきていた総司の腰は緩く揺れていたが、総司の舌を軽く吸い上げた時に腰がビクビク震え始めた。
ここぞとばかりに総司の口内を蹂躙すると、息継ぎの合間に「あっ」と喘ぎ、その後口付けるとそのまま「んん……」と呻いて、総司は俺を最高に締め上げてから弛緩する。
顔を離し、総司の下半身に目を遣ると、案の定総司は果てていた。

「何だ、本当にキスだけでイっちまったのか?」
「……」

何でも素直に言ってくる総司も、この時ばかりは黙っていた。
流石に屈辱だったのかと思ったが、そうではなかった。

「……もっとして?」
「何をだよ?」
「キス」

総司は相当お気に召したようだ。
キスをしながら果てたばかりの総司を扱くと、すぐに熱を持った。
どこが俺達の境目か分からなくなる程の激しいキスをしていたが、急に総司が口を離して「ねぇ」と上目遣いで強請ってきた。

「キスだけじゃ足んねぇか?」
「僕だけイかせるなんて、ズルイ……。僕の中に挿れてるやつ、早く動かしてよ」

可愛くてたまんなかった。
挿入したまんまだった俺をいきなり激しく動かすと、総司は可愛く鳴いた。
今日はこれで終わりか、と思ったが総司がまだ強請ってきた。
一体何回させる気だと思ったが、年寄り扱いされんのも癪で、総司の期待に応えてやることにする。

「なら後ろ向け」

机から降りた総司は、今度はその机に手を付いて俺を受け入れた。

「あっ、もっと、奥っ……!」
「もう全部入ってるよ」
「嘘、うそっ! さっきはもっと奥まできてたもん!」
「ちっ」

角度を変えて突き上げる。

「あっ、ソコッ……! あ、ぁ、あぁぁ、気持ち、い……あっ」

後ろから攻めながら総司自身を扱いてやると、怒られた。

「やだ、触んないで!」
「何だよ、好きだろ?」
「やだ、出ちゃうから! あっ、出ちゃっ……」
「出せばいいだろ?」
「嫌だ、僕ばっかり……」
「何だ、そりゃ」

仕方ねぇから扱く手は離してやり、ひたすら後ろから攻め立てた。
総司が一番良く反応する部分へ、これでもかと突き上げてやると大きな声で鳴いてから果て、俺も続いて総司の中で果てる。
息を整えながら、総司が俺に目線を寄越す。

「後ろだけでイっちゃった……」

口の端を上げて、情欲な目でそんな事を言うから。

「そういうのを、淫乱ってんだよ」

と言ってやったら

「そうかも」

と笑って、この日はこれで終わった。
総司の所為で後回しになった仕事をする為俺は大学に残ったが、総司はさっさと帰って行く。
それは俺達が本当に身体だけの繋がりなんだと思わせるような潔さで、少し寂しくなったが……。

次の日も来るかと思ったが、総司は来なかった。
日を空けてまた来た総司は、遅くまで俺を求めるのに帰る時は呆気無い。
それでも、俺は総司が来るのが楽しみでならなかった。

乱れた関係にも関わらず、まるで初恋のような気持ちでいたこの期間を、俺は忘れることが出来ない。


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