無力な言葉

沖田さんを抱く時はいつも、普段の自分からは考えられないくらい激しく動くようにしている。そうすれば、沖田さんが声を抑えられないと知っているからだ。

俺の熱が深くまで届くと彼の喉が反る。
月明かりに照らされて仄白く浮かぶそこに噛み付いてみると、沖田さんは短く叫ぶのだ。

汗の匂いと欲の匂い。そこに混じる、見知らぬ匂い。
あぁ、今日も彼は俺の知らない誰かに抱かれてきたらしい。

持ち上げた沖田さんの脚が痙攣している。
気持ち良過ぎるからか、意味の無い音をただただ発している姿は酷く扇情的で、俺はもう沖田さんの事以外何も考えられなくなってしまう。
そうしている内に沖田さんが限界を叫ぶ。もういくと言って首を振る彼から飛び散る汗が、敷布を染めた。

「そ……ま、く……相馬君、一緒に達って」

いつも彼は無茶を言う。こんな色っぽい人相手に、若い俺がそんなにもつ訳が無いじゃないか。
結局我慢なんて出来なくて、俺が先に果てた。

抜くのが間に合わなくて思い切り中に出してしまったけれど、沖田さんが「いっぱい出てるね」と笑ってくれるから別に良いのだろう。
沖田さんをいかせる為に中心へと触れた瞬間、沖田さんも達していた。

「あとちょっとだったのにね」
「何がですか?」
「相馬君があとちょっともてば、一緒にいけたのにね」
「……すみません」
「別にいいけど」

許してあげるからもう一回しようかと言われるのは、最早当たり前の流れになっていた。
出しても全然萎えない俺は、そのまま動きを再開させる。
途端に上がる沖田さんの甘い声に、また直ぐいきそうになって本当に困る。

「沖田さん、」

呼び掛けても返事は無い。ただ喘ぎ声だけが俺の耳を打つ。
きっとわざとだ、この後俺が何を言うか知っていて無視をしているんだ。それでも言わずにいられないのは、一体何の業なのだろうか。

「……好きです」

俺の想いは、沖田さんの出す甘くて高い声にあっさりと掻き消されてしまった。

2016.05.12


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