戯れ言は聞き飽きた

「相馬君、口づけしようか」

僕の誘いに、相馬君は顔を赤くして固まってしまった。

「僕なんかとしたくない?」

否定されると分かりきっている質問を投げて、予想以上に強く否定されるのを見て僕は笑う。
意を決したのか相馬君が僕の肩に手を掛けたところまでは良かったけれど、恐る恐る近づいて、触れた実感も湧かないくらいにちょんと口先だけを付け、すぐに離れてしまった相馬君に腹が立った。
相馬君の襟元を握り、力強く引き寄せる。勢い任せに倒れこんできた相馬君の唇を、奪うように塞いだ。顔の角度を変えて、もう一度。
相馬君がなかなか僕に手を出してこない理由は、もちろん立場的なこともあるけれど、それだけではないのだと知っている。知っているけれどーー顔を離して、満面の笑みを浮かべながら僕は言った。

「もういい加減、大事にされるのに飽きちゃったんだけど」

その言葉に、相馬君は驚いた表情を見せる。
このまま逃げるようなら、僕らの関係は解消してしまおう。そう考えていた僕は、思いがけず相馬君の腕の中にぎゅっと包み込まれることになった。
緊張を孕んだ息をひとつ吐いてから、相馬君が「いいんですか?」と僕の耳元で囁やく。

「俺がどれだけ沖田さんを好きなのか、伝えてもいいんですか?」

うん、いいよと答えた直後、予想もしていなかった激しい熱を唇に受けた。

拍手文@掲載期間
2018.01.21 - 2018.03.31
title/箱庭様


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