白い指

※現パロで原沖
※沖田のメンタルがちょっと弱い



左之さんの事を思い出そうとすると、僕の記憶を支配するのは「白」だ。

僕が左之さんの家で知っているのはベッドルームとバスルームだけ。
シーツはいつも真っ白で、バスルームの壁も浴槽も白くて、他の色を見る事など許されていないような錯覚に陥る。

「あ、はっ……さのっ、さん……」

耳に響く自分の声がやけに高い。
うつ伏せになって腰を高く上げて、ただ恥ずかしい嬌声を上げ続ける僕の視界には、白くて乱れたシーツが映っている。

こんな関係になった切っ掛けはもう覚えていない。
ただ、続けていればいつか左之さんが僕に情を抱いてくれるんじゃないかなんて、幼稚な期待をしていた事だけはよく覚えている。

けれど結局そんな事は無くて、それどころか僕等は向かい合って抱き合った事すら無い。
一度顔を見ながらしたいですと言ったら、「勘弁しろよ」と笑われた。
いっそ理不尽に怒られたり嫌がられた方が良かった。
笑って言われた事により、左之さんの僕への気持ちが完全に割り切った物なのだと思い知らされただけだったから。

その日は左之さんに突き上げられながら、真っ白なシーツにぱたぱたと染みていく自分の涙を見ていた。
胸は痛くて堪らないのに、行為に慣れ切った身体は徐々に左之さんの動きから快感を拾い始め、結局最後には自ら腰を揺らして喘いでいた。

こんな僕を、左之さんはどう思っているのだろう。
僕がまたこの家に来たいと言った時、「総司は淫乱だなぁ」と笑われた――きっと、それが僕の印象の全てなんだと思う。

仕事場では今迄と全く変わりなく接してくれているけれど、内心では僕を軽蔑してるに違いない。
例えそうだとしても左之さんと触れ合えるなら、いや、触れ合える唯一の方法がこれしか無いのなら、僕はこの関係を止める事なんて出来ないんだ。

今日もまた、冷たい事を言われて涙が滲む。
辛さと快感の両方に耐える為、ぎゅうとシーツを握り締めた僕の指先は、血の気を失い真っ白だった。


白い白い左之さんの家。
別の部屋を見る事を許されない僕は、他の色の印象が無い。

ならばどうかこの指先だけでも、左之さんの家の一部に加えてはもらえないかと、僕は揺らぐ思考の中で、願わずにはいられないんだ――

2012.07.03


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