醒めぬ夢は君が為

屯所の縁側。ぽかぽか陽気の漂うそこに、ぽつんと総司が座っていた。
その姿があまりに気持ち良さそうで、だけど少しだけ寂しそうで、俺は勢いよく声を掛ける。

「総司! 隣、座っていい?」

俺の声に一瞬驚いた総司は、平助は今日も元気がいいねと呆れたように笑った。だけどその手は「どうぞ」と隣の空間へと俺を促してくれている。

遠慮なくそこに座った俺は、最近起きた面白いことや腹が立ったことなんかを、一方的に話し始めた。ちゃんとした会話にはなっていなかったかもしれないけれど、総司は何度も俺の話で笑ってくれたから、つまらなくはなかったと思う。

日差しの暖かさと、総司の笑顔。
うまく言えないけど、それだけですごく幸せだなって思えた。明日も明後日もその先もずっと、この場所でこんな風に総司の笑う姿を見られたらいいのにな……そう思ったことだけは覚えている。

気づいたら、すぐそばに総司の寝顔が見えた。
それまでの記憶が無くて、慌てて左右を見ようとしてごちんと頭を床にぶつける。痛い。
どうやら俺は、いや俺たちは、二人して縁側で寝てしまったようだ。

あー俺、いつ寝ちゃったんだろ。
もっと総司と喋ってたかったのになぁ、なんて考ながら起き上がろうとして気づく。
俺の……俺の手が、総司の手と繋がってる!

起きてるときに総司と手なんて繋いでない。
だからこれは、寝てしまった俺の手に総司が自分の手を繋いできたか、もしくはお互い無意識に繋いでしまったか。

できれば総司から繋いできていてほしいけど、きっと総司はそんなことしないよな。
てことはお互い寝てる間に繋いだってこと?

案外それもいいかもしんない。だって寝てるのに同じこと考えてたってことだもんな。あれ、違うかな? だって記憶なんて無いし。
あぁもう何でもいいや、とにかく俺は嬉しいんだ。

だけど目が覚めてしまったからには、勝手に手を繋ぎ続けていることに罪悪感が生まれてくる。
離さなきゃいけないよな。
理性ではそう考えているのに、あとちょっとだけ、もうちょっとだけ……ううん、やっぱり総司が目を覚ますまで。
理性に反して、欲望が募っていく。
総司が起きたらすぐ手は離すから、だから今だけは繋いだままでいさせてほしい。

さっきはもっと喋りたいと思っていたはずなのに、いつから俺はこんなわがままなやつになってしまったんだろう。
俺がわがままだって知っても、総司は嫌わないでいてくれるかな。

2017.12.09
お題/Lump様


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