狂愛

恋仲になって、初めて知ったことがある。

――総司は、とても嫉妬深かった。

本人もそのことは気にしていて、本当は縛りたくなんかないのだと、辛そうな表情でぽつりと呟いたのが忘れられない。
きっとそれは嘘ではないのだろう。
けれど、感情の抑えが効かないらしい。

この間など、俺が他の者と少し長く話していたという、ただそれだけのことに酷く憤慨し、俺の意思など無関係に激しく抱いてきた。
「痛い」と「止めろ」を繰り返す声は、情けないことに涙混じりになっている。
総司の怒る声が、俺を押さえ込むその腕が、まるで知らない者のようでとても怖かったのだ。

こんなときの総司は、本当に総司なのかと問いたくなるほど俺を酷く扱う。
総司は怒ってさえいなければ優しい。だから、余計に恐ろしくなる。

行為が済んだ後、布団には少量の血が付いていた。
慣らしもせず無理矢理挿れられたから、切れてしまったのだ。
徐々にうっ血して青くなっていく腕や足、全て総司が掴んだ場所だった。

だが、身体より胸の方がずっと痛い。
理不尽な暴力は、俺の心を傷付けるのだ。
なのに総司の方が泣きそうな顔をするから、俺はいつも許してしまう。

きっと許すからいけないのだろう。
だが俺を傷付けて、結局自分の方が傷付いてしまう総司に、何を言うのが、どうすることが正しいのかなんて分からなくて……。

あぁ、泣くな総司。
俺は大丈夫だから、そんな辛そうな顔はしなくて良い。
もう総司が不安になることなどしないから。

「ごめんね、一君」

そう繰り返す総司を、俺はそっと抱き締める。
こんなのはおかしなことだと分かっているのに、どうしようもなかった。
いまの総司には、俺のことしか見えていないのだから――俺は、ずっとおまえに好かれたいと思っていたのだ。

だからこの関係が間違っていると気付いているのに、離れることなど出来ない。
その所為で総司が傷付くと解っていながら、それでも傍にいたいと思ってしまうから。

俺はきっと、明日も誰かと話してしまうだろう。もう誰とも喋らないなどという約束は、守られた例がない。
だから総司は、その度に怒って俺を抱く。
そうしてまた傷付いて、俺の為に泣けばいい。
総司はこれからも俺だけを見て、俺のことしか見なければ良いのだ。


あぁ総司。


好きになってしまって、すまない。



2015.09.10
斎藤さんの愛情の方が激しかったというお話

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