いつか罪に呑まれても

恋だと気付いたのはいつだっただろう。
今夜もまた、自分のものとは思えぬ声を上げながら、紅の揺らぐその瞳を俺は見上げていた。

愛の無い行為。
それでも抵抗しない理由に、彼は気付いているのだろうか。

好きだなどと言ったが最後、彼はもう来なくなる気がした。
それが怖くて、俺は少しだけ嫌がる素振りをする。
けれど風間が動いたら、そんな演技をする余裕など無くて。
それでもまだ終わらせないで欲しいという、その一言すら口には出来ない。

少しでも長く一緒に居たい。
けれど終わりは必ず訪れる。

果てそうになる少し前、俺は無意識に風間に縋り付く。
その時いつも、俺の背に回された腕に一瞬だけ力が籠る気がする。


まるで抱き締められているような錯覚――


気のせいだということなど、分かっている。
風間の用が済めば、向けられるのは冷たい視線だけなのだから。

こんなことを、もしも他の者に知られたならば、何と言われるだろうか。
怒られるだろうか――いや、例えば平助なら傷付いた顔をするかもしれない。
大切な同士に言えないこの気持ちは、罪と呼ばれるのだろうか。

いつかこの気持ちにのまれてしまっても、俺は後悔せずに居られるだろうか。

2012.06.28
お題/確かに恋だった

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