永劫共に
※拍手ログ
「風間、いつも俺がしてもらってばかりで悪いと思っている」
共に床へ入ろうとした際、小さいが、それでも凛とした声で斎藤にそう言われた。
何のことかと問う。
「その……いつもの、夜の……」
直前の凛とした声と姿勢はどこへやら、急に口ごもった斎藤の言わんとしている事を察した。
「構わん、俺がしたくてしているだけだ。何か不満があるというなら話は別だが」
「不満など……ただ、その、いつも俺からは何も出来ずにいるから……」
「何かをしてもらおうなどと思ってはおらん」
「それでは、俺の気が済まんのだ。今夜は俺に頑張らせてくれ」
恥ずかしそうな顔はそのままに、それでもはっきりとそう告げた斎藤の目は真剣そのものだった。
そしてこの夜、初めて斎藤の口淫を受ける。
その行為にも、仕草にも、いつも以上に興奮させられたことは否めまい。
挙句夜目にも輝かんばかりの白い肌を、惜し気もなく晒しながら俺の上へと乗る斎藤の姿を見れば、知らず俺の息も上がる。
最奥まで俺を受け入れた斎藤は一度止まり、短く息を吐いてから目を瞑った。
そして困ったように動きも止めた。
「どうした? 体勢が辛いなら、無理はしなくて良い」
「辛くなどない、ただ……」
「何だ?」
「動けんのだ」
「そんなことか。構わん、無理などするな、初めてなのだか」
「違う!」
「何が違うのだ」
「その……もう、達してしまいそうな程、なのだ……それで、動けそうに、ない」
途切れ途切れにそう言って、困ったような顔で俯く斎藤が、俺を刺激しない筈はない。
「煽られているとしか思えんのだが?」
「そんな、つもりは……」
「斎藤、位置を変えるか?」
「……今夜は俺が頑張ると言ったはずだ、風間はそのままで居ろ」
動けないと言っておきながら、律儀に己の信念を貫こうとする斎藤は矢張り美しく。
発した声よりも凛とした目で見つめ返され、素直に頷き斎藤の動きを待った。
恐る恐る、と表現するのが一番しっくりくるであろう動作で、斎藤はゆっくりと腰を上げる。
ただそれだけのことにも熱い息を吐き、瞳を潤ませ、月明かりしか差し込まない蒼く染まったこの部屋で、その姿は何とも官能的であった。
動作はゆっくりではあったが、その分斎藤の中の熱さを強く感じて堪らない気持ちになる。
だが、斎藤の身体を支える膝は小刻みに震えていた。
「斎藤、辛いのであればまた次で良い」
斎藤を案じて声を掛けると、よく分からない返事をされる。
「あ、今は止め……」
「どうした?」
その直後、斎藤の欲が俺の腹へと掛けられた。
まさかこの状態で斎藤が果てるとは思いもよらず、一体どうしたのかと疑問を投げる。
「もう達してしまいそうだと言ったであろう。それを我慢して動く事に集中していたというのに、声など掛けられては耐え切れん」
ぽそぽそと、悔しそうだがそれよりも申し訳なさそうな色を帯びた声音で告げられた。
その顔も、声も、言葉も、全てが俺を煽って仕方が無い。
「俺はまだ達しておらんのだが、続けても良いのか?」
「待て。次こそあんたを達かせてみせる、今夜は俺が頑張ると」
「もう充分だ」
その後斎藤が何かを言う前に、引き寄せて口付けた。
驚いた顔をされたが、それでも舌で応えてくる斎藤を抱き締め、今度は俺から突き上げる。
口付けたままの状態で斎藤が何か言おうとしたが、言葉になる前に全て俺が飲み込んでいった。
斎藤から唇を離したのは、俺の動きを激しくしてからだ。
声が聴きたくてそうしたのだが、想像以上に艶のある声を耳元で聴かされ、結局俺もいつもより早く果てることとなった。
少しして、斎藤が決意を述べる。
「また俺は、何も出来なかった……。次こそ動いてみせる、だから」
「そんなこを気にせずとも良い。俺は今に満足している」
俺の言葉を聞いて、まだ何か反論しようとした斎藤に被せるように言う。
「俺は死ぬまでお前と居るつもりだ。早いうちから色々とやり尽くしてしまっては、それこそ困るのではないか?」
そう言って俺は斎藤を黙らせることには成功したが、言葉の意味を理解してから嬉しそうに微笑んだ斎藤に、俺の心臓を黙らせることなど出来なかった。