梅雨の合間

※現パロ

 梅雨の時期。珍しい晴れ間に気を許した事は、不覚であったと思う。斎藤と出掛けていたのに、突然の大雨で二人共びしょ濡れになってしまった。俺の家が近いからと一緒に帰り、着替えを用意するからと言って、先にシャワーを浴びさせた。
 何度か泊まりに来ている内に、少しずつ増えていった斎藤の服。クローゼットから出す時に思わず微笑んでしまった。こんな俺の姿など、とても斎藤には見せられない。誰も居ない部屋でこほんと咳を一つ。そうして自分を落ち着ける。
 斎藤の分と、自分の分の着替えも準備して風呂場へと向かう。脱衣所に入ると人が居た。驚いたが、斎藤であった。

「もう出たのか、着替えはここに……」

 言い掛けて、斎藤の格好に気付く。

「それは……」
「あぁすまない、取り敢えず温まったから出たのだが、着替えはこれではなかったのか?」

 斎藤が、俺の手に持たれた服を認めて困った表情をした。

「いや、それでも構わんが」

 これは嘘だ。大いに構う。斎藤が着ているのは、ここで乾かしていた俺のシャツだった。それ自体は問題ではない。
 俺よりも小柄な斎藤には少しだけ丈が長く、下着を履かずとも見えはしないが、しかし薄手の白シャツだ。直接見えずとも、色々と透けている。何が透けて……いや、言うまい。
 黙って斎藤から目を逸らした俺に、不安気な声が掛けられる。

「これは、俺が着てはいけない服だったのか?」
「いや、そうではない」
「だが……」

 既に何度か身体を重ねているのに、何を今更気にしているのか。自分でも呆れてしまうが、それでも矢張り緊張した。
 斎藤は、無防備過ぎる。自分が今どんな格好でいるのか、恐らく全く気付いていない。全て無意識なのは自明の理だ。

「斎藤、」

 呼べば少しだけ怯えた顔をされる。俺の服を勝手に着たことを、申し訳なく思っているからに違いない。どこまでもズレている。

「そのような格好を、俺の前以外でするな」
「格好……? 俺は、風間以外の家になど上がったりはしないが……」

 この無防備な男には、どう言って聞かせれば良いのだろうか。
 まだシャワーを浴びていない俺は、外の雨に濡れたままだ。だが洗い立てのシャツが汚れるのも厭わず、俺は斎藤を抱き寄せた。
 仕置きと称して手を出そうかと思ったが、無垢な瞳で見上げられればとても出来ず。俺は溜息を吐き、期待するように向けられた斎藤の唇に、そっと柔らかなキスをした。

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