こわれたこころ
※SSL/薫が病んでます
何故、こんなことになったのだろう。
「や、やめ、ろ……南雲」
「どうして? 斎藤、気持ち良くない?」
「あ、あぁ、や……だ」
気持ち、いい。
良くて腰が揺れる。
揺れる度に俺の頭上からぎしぎしっと音がして、その音で快感に持って行かれそうになる意識が現実に引き戻された。
どうしてこんなことになったのか、俺にはまだ理解出来ていない。
何故ただの後輩だと思っていた南雲が、俺を縛り付けてるのか……解る訳が無い。
「いた、痛い、南雲……手を、解け……」
「駄目だよ、そしたら斎藤は逃げるだろ?」
「逃げ、ない……逃げないから、南雲、なぐ……あ、ぁ」
「可愛いよな、斎藤って」
「や、嫌だ、っ、止めてくれ」
俺の懇願も空しく、南雲の手の動きが速まった。
もう出てしまう、という所で突然その手を止められる。
「南雲……?」
「なぁ斎藤、どうしたい? イきたい?」
そんな言い方をされて、俺が素直に答えられるわけがないと知っているくせに、南雲は嬉しそうに訊いてくる。
「ど、どうしたいかなど……手を、外して欲しいに、決まっている」
「そうじゃないだろ? それともこのままでいいのか?」
「……っ、」
確かにこのままでは辛かった。腕ではなく、下半身の熱が。
「イかせて、って可愛く言えたら出させてやるよ。なぁ、どうしたい? 答えろよ、斎藤」
怖かった。南雲が、凄く。
その表情はいつもの可愛らしいものなのに、まるで知らない人のようで凄く怖い。
「ずっと一緒にいるくせに、斎藤ってば全然手に入らないんだもんな」
南雲には珍しく柔らかい笑みを浮かべていたが、俺を見ているはずの視線は、どこを捉えているのか分からない。
普段であればきっと可愛いと思うであろうその笑顔が、酷く現実味を失わせていた。
「でももう俺のだ」
くすくすっと笑って呟いた南雲に、あぁこわれてると直感した。
「好きだよ、斎藤。凄く……好き、ずっと、好きだったんだ」
イけない程度にゆるく刺激されて、俺はまた甘い声を上げる。
その声に南雲は満足そうに笑った。
「斎藤は、ずっと俺と一緒に居るんだ。そうだろう?」
俺は結局"可愛くお願い"なんて出来なかったけれど、南雲は俺を激しく扱いて果てさせた。
息を整える間に薫が上に被さってきて、未だ誰にも触れられた事の無い秘所に指を這わせてくる。
俺も、壊れてしまうのだろうか。
いや、もしかしたらもうこわれてるのかもしれない。
先程まで怖かったはずの南雲が、余りに必死で愛しくなった。
このままずっと、二人で閉じ籠っていても良いかもしれないと思った俺は、まともなのだろうか、それとも……。