しかん

「視姦罪というのがあるそうだ」

腕の中に居る一君を穴が開く程眺めていたら、突然そんな事を口走られた。

「どこからそんな情報仕入れてきたの? 一君はそんな怖い言葉、知らなくて良いんだよ」

笑って言えば、余りにも僕の視線が激しいから、苦手なパソコンでちょっと調べたらそれが出てきたのだと伝えられる。

「へぇ、そうなんだ。じゃあ僕にそんな罪を負わせた一君の罪には、何ていう名前が付いてるのかな?」

僕の問い掛けに一君はあたふたとして、俺は何もしていないと訴えてきた。
まぁその通りなんだけどね。
でも何だかんだ言いながらも、僕と一緒に居る事を一君が嫌がっているようには見えない。
これは勘違いなんかじゃない……そう自信を持って言える程、僕達は長い事一緒に居るんだ。

余りに自分を見詰める僕を、きっと少し咎めるつもりだったんだろうけれど、僕の切り返しに結局言う事がなくなってしまったようで、一君は困ったように枕に顔を埋めてしまった。
そんな姿も可愛くて、目の前で凶悪な色気を醸す彼に、僕の理性なんてすぐ崩されてしまう。
どれだけ長く一緒に居ても、それだけは変わらない。
僕はその白い肌に手を伸ばした。
あぁまた新しい罪の名を出されてしまうかも。

でもどうしよう、
触らないでいるなんて出来そうにない。

昨夜も抱き合ってそのまま何も着ていなかったから、直ぐに一君の大事なものを握りこむ。
最初はゆるゆると。
でも括れの部分とか、先端の窪みとか、一君が感じる部分をこれでもかと優しく刺激すると、直ぐに可愛い声が聞こえてくる。
簡単に弛緩する細い身体。

熱っぽい表情は僕に気を許しているものに他ならなくて、その事実にまともな気持ちでいられる訳がない。
時間を掛けてゆっくり長くなんて思っていたのに、気付けば思い切り激しく突き上げていた。
酷く高い声で啼いたと思ったら突然、一君の喘ぎが止まる。

顔を見たら呼吸も止まってる気がして、とうとうヤり殺してしまったのかと慌てて顔を近づけると、細く息をしているのが確認出来た。
ほっとするのと同時に、僕の動きで気絶する程感じてくれたんだと思うと嬉しくなる。

無抵抗の人間を揺すり上げる事には流石に抵抗があったけれど、僕の熱はまだ解放されてないんだから仕方が無い。
意識の無い一君を、さっきと違って優しく揺すった。そんな僕の動きに合わせてゆるゆると動く一君のカラダ。

世の中には死姦が趣味の人がいるらしいけど、その気持ちは全然わかんない。
やっぱり喘いで、泣いて、縋ってきてくれた方が僕はいいな。
でも一君限定でなら、喘がなくても泣かなくても例え僕を見てくれなかったとしても絶対に可愛いと思えるけれど。

それからは、ただ僕が達する為だけに一君の身体を使った。
じろじろ見つめているよりも、今の方がよっぽど罪深い感じ。
あ、どうしよう。段々動かない一君にも興奮してきちゃった。

静かな息しかしていない一君は、何だか生きていないみたい。
死体を盗むのも罪なんだよね。でもごめんね、一君。きっと僕は一君が死んでしまったら、その身体が朽ちるまでずっと傍に置いておくよ。
誰にも渡せない。一君が相手なら、どんな罪をも犯してしまうに違いないんだ。

返事の出来無い一君に向かって僕はずっと愛の言葉を囁いて、また視姦罪で訴えられそうな程一君を見つめていた。
もしもこの気持ちが罪だと言うのならば、僕は出逢った瞬間からずっと罪を重ねているんだろう。

2010.11.08

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