いつだって、どこにいたって


※SSL


「何で俺が来なきゃならないんだ」

 ぶつぶつと悪態を吐きながら、薫がベッドの脇に立つ。

「だって僕動けないし、逢いたいと思ったら来てもらうしかないでしょ?」
「お前が不注意なだけだろ? 全治三週間だって?」
「薫の事考えてたら階段がある事に気付かなくてさ……ねぇ、これって薫のせいになるんじゃないのかな?」
「は? 何言ってんだ、お前が悪いに決まってんだろ!」
「そうかなぁ、僕をこんなに夢中にさせる薫が悪いと思うんだけどなぁ〜」

 そう言って、薫を見遣ると顔を赤くして言葉に詰まっていた。まぁ、返事なんて大方予想はついているけどね。すぐ言われるか遅れて言われるか、それだけの違いってだけ。

「ばっ、馬鹿じゃないのか!!」

 ほらね。

「じゃあ薫にお勉強でも教わろうかな?」
「後輩の俺に何言ってんだ」
「このままずっと入院して留年して、来年薫と一緒に授業受けようかと思ってさ」

 そう言いながら、僕は少しひびが入っていると診断された包帯ぐるぐる巻きの自分の足を見る。うーん、留年出来る程の怪我じゃないな。

「馬鹿なこと言ってないでさっさと休めよ、俺はもう帰るからな」
「えっ、いま来たばっかりなのに!?」
「これ以上いたって、お前と話すことなんて別に無いだろ?」
「やだやだ、僕やる事無くて暇なんだからね!」
「それは俺を暇潰しのために呼んだってことか?」
「違うよ、薫がいなくなったら暇になってつまんないってことだよ」
「どっちでもいいから、お前はもう休んでろよ」

 そう言って薫が本当に帰ろうとするから、思わず腕を掴んで引き寄せた。体勢を崩して僕の胸に抱かれる格好になった薫は、慌てて起き上がろうとする。僕は力を籠めて、それを阻止した。更に「僕怪我してるから暴れないでね」と言って大人しくさせて。
 暴れられこそしないものの、何も喋ってくれない薫に僕はある事を訊いてみる。

「ねぇ病院って言ったらアレ、やってみたくならない?」
「アレ? アレって何だよ?」
「え? わかんないの? あれだよあれ、病院えっち」
「っ、なるか馬鹿!」
「えー嘘ーならないの? 僕はしてみたいなぁ〜入院なんてなかなか出来ないしさ」
「お、お前動けないんだから出来ないだろ!」
「僕が動かなくたって、薫が動いてくれれば出来るでしょ? ねぇしよう」

 それから僕が薫を抱き締めた状態のまま、喧嘩のような口論が続いた。普通に頼んでも薫は頷いてくれないから、とうとう僕は僕がどれだけ薫を好きなのかを、ゲーテだって唸る程の情熱的な言葉で告げてみせた。そうしたら、見たことも無いほど顔を染めた薫が「今日だけだからな」と言ってくれたのだ。
 大部屋に空きが無くて個室になったのは、今にして思えば幸運だったと思う。看護師さんの巡回時間は把握している。あと2時間は来ない。

「たっぷり出来るね」

 そう言ったらぺちっと頬をぶたれてしまったけれど、否定はされなかった。僕は手は動かせるくせに、上手く頼み込んで服も薫に脱がせてもらう。もう何度も肌を重ねているのに、未だに恥ずかしそうにする薫は可愛くて堪らない。僕を扱き始めた時も、恥ずかしそうにして目を逸らしている。

「見てるのが恥ずかしいなら舐めてよ」

 返事を聞く前に、無理矢理薫の顔を僕自身の前にまで持っていった。怯えたような目を僕に向けてくるけど、その目は逆効果でしかない。

「ね、お願い」

 頼めばおずおずと薫が僕を咥えてくれて、「気持ち良いよ」と言ったら薫の動きは少し大胆になった。
 それからは上手いこと褒めて、薫の口の中へ吐き出した。今日初めてだから少し量が多くて、薫は苦しそうにしていたけれど。

「零したら、薫とえっちしたのが病院にバレちゃうからね」

 こう言って、全部飲んでもらった。それから早く薫が欲しいな、と耳元で囁いて。やっぱり恥ずかしそうにしていたけれど、薫は僕の上に乗ってくれた。
 あぁ、この日の薫をビデオに収められなかったのは残念でならない。最初こそ恥ずかしそうにしていたけれど、結局快感に負けて薫は随分と乱れてくれたから。
 薫が疲れたと言えば、また僕がどれだけ薫を愛しているか細かく告げて「だからもう一回だけお願い」と強請る。もう悪態を吐くこともなく、小さく「ん」と頷いた薫の何と可愛かったことか。

「沖田っ、もうやだ、や、あっ、むり、む、り、あっ、あ、ぁぁ」

 最後には薫はもう自分で動けなくなってしまって、だから僕が薫の腰を掴んで滅茶苦茶に突き上げた。とはいっても片足が吊られている状態だったから、いつものようにはいかなかったけれど。それでも薫は僕の名を呼びながら、何も出さずに果てていたんだ。
 汚しちゃ駄目、と言って薫の根元は縛っていたから相当快感が強かったに違いない。震えながら涙を流す薫を見て、誰にも渡すものかと心に誓う。
 ガクガクと震える脚に必死に力を籠めて、薫はそろそろとベッドを降りた。僕は遠慮せず薫の中に何度も出したから、収まりきらなかった白濁が薫の肌を滑っている。

「薫、病院汚しちゃ駄目だからね」

 そう言うと、後ろの口から零れているものに気付いたようで、慌てて鞄からタオルを取り出し拭き取っていた。それなりに手際良く後処理をし、服を着込む薫を見ながら僕も自分の服を着込む。
 服を着終えた薫はまた鞄をガサゴソと漁り、何をしているのかと思えば中からマジックを取り出した。何に使うのかな、と思ったら……。


 馬 鹿 沖 田 !!


と、僕の吊られている足の包帯にでっかく書いた。

「……薫ってば小学生みたい」
「これでもかなり我慢してやってるんだからな!」

 乱れてた時が嘘のように、強気になって反論されてしまう。まぁ、今日は僕の我儘を聞いてくれたから良いか。

「うん、今日はありがと。来てくれて嬉しかった」

 そう言って微笑んだら、薫は目を逸らして何か言いた気に口をぱくぱくと動かしている。どうしたのかなと思っていたら、呟くようにこう言った。

「あ、明日も来てやるよ」

 それからすぐに、病室を出て行ってしまったけれど。……もしかして、病院でするの気に入っちゃったのかな? なんて言ったらきっと怒られるだろうな。
 あぁ、怒っても恥ずかしがっても薫は可愛い。結局僕は、どこにいたって薫のことばかり考えてしまうんだ。

 明日も薫は乱れてくれるのかなと考えて、僕は一人で微笑んだ。


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