仇なす所業


※後半視点が変わります


止めろ、という声など無視して続ける。

本当に止めて欲しいなら、来るべきじゃなかったんだ。
分かってて来た薫が悪い。
だから、僕は止めたりしない。

吐き出す言葉とは裏腹に、乱れて僕に絡まる四肢は何とも妖艶でこちらの息が上がる。
容赦なく突き上げると泣き出して、変わらず止めろと口では言うけれど、声音はもっとと強請っていた。

片膝を持ち上げて深く抉るように突き刺すと、悲鳴のような声を上げて僕から逃げようとする。
直ぐに薫の腰を掴んで押さえ付け、僕の腰を激しく動かし喘ぐ薫の声を聞いた。

掴まりたいのか、それとも押し返したいのか。薫は腕を伸ばしてきたけれど、結局僕の動きに翻弄されて、その腕はぱたりと布団に落ちた。
手がシーツを強く掴むのは辛いのか、それとも気持ちが良いのだろうか……。

今迄一度だって「気持ち良い」なんて言われた事は無いけれど、熱くて荒い息をして、堪えるような表情の薫を見れば、どう思っているかなんて聞くまでもない。

なのに先に達するのは何故か僕の方で、その後薫のを扱いてやるのが常だった。
どう考えたって「最中」の方が激しい筈なのに、薫は僕が扱いて達してから、決まって眠るか気を失うかする。
変なタイミングだなぁと意識の無い薫を見れば、可愛くて堪らなくてまた熱が宿る。
誰にも渡したくない、だけど僕のものでもない。

「これ以上僕を夢中にさせないでよ……」

呟いても、届かない。
意識の無い薫は、死んでいるのではないかと思う程の僅かな呼吸しかしていなかった。
僕がこうさせたのに、このまま目を開かなかったらどうしようと悲しくなる。

「本当は優しくしたいんだけどな」

届かないから本音を言った。
優しくしたい、大事にしたい、だけど顔を見るとそんな余裕が無くなってしまう。
薫の身体に仇をなすのは僕だけど、僕にそんな事をさせるのは薫の行動。
君が来るから、僕は酷いことをしてしまうんだ。
そんな所業の繰り返し。

今夜もまた返されることの無い愛の言葉を囁いて、返されるはずの無い優しい口付けをして、まるで恋人のように抱き締めてから、僕は深い眠りに就いた。





目が覚めたら沖田に抱き締められていた。

「……沖田?」

声を掛けても、聞こえてくるのは規則正しい寝息だけ。
整った顔は冷徹にも見えるけれど、無防備な寝顔はどこか温かみを感じさせる。

腕から抜けようと動いてみても、想像以上にしっかりと抱き込まれていて簡単には抜け出せない。
俺を抱き締める腕は気持ちが良くて、寝ている沖田の無意識の優しさに胸が締め付けられてしまう。

もう会わないようにしようと思うのに、「逢いたい」と言われてしまうと何故か来てしまって、繰り返す内に今では声を聞くだけで妙な場所が疼くようになってしまった。

俺の身体をこんな風に作り変えた責任を、こいつには一生掛かってでも取ってもらわないと困る。
だけどそれを口にするには勇気が無くて、好きだと言って断られるのが怖くて堪らない。

「好きだ……」

返される事の無い告白を、寝ている沖田に囁いた。
まるで恋人のように沖田の背中に腕を回してから、俺は再度の眠りに就く。


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