蒼の幻惑

※羅刹斎藤と斎藤は別人設定


響く水音――

その音源が自分であるなど、信じたくない。
然し其れはどうにも抗えぬ事実。

「っ、は、ぁ、、やめっ……」
「質問に答えれば、直ぐに止めてやると言っているだろう」

目の前には紅い瞳。
揺れる髪は白く、その口はいやらしく上がっている。
唇を噛み締め答えを拒めば、それが気に喰わないのか、目の前の男は俺の中へと挿し入れている指を増やし、酷く乱雑に掻き回してきた。

只の水音が泡立つような音に変わり、羞恥が更に上がった。

「止めろと、言って……」
「では答えろ。俺と斎藤、あんたはどちらが好きだ?」

唐突に、指の動きがいやらしいものへと変えられた。
自分から漏れる息が熱い。
此の様な状況が続くのは望む所ではない。止む無く俺は、ゆっくりと口を開いた。

「俺、は、さ、いと……の方が、」

答え切らぬ内に、意思に反して起ち上がっていた俺のものの先端を、強く掻かれた。
急激な刺激に上がった声は高く、凡そ自分のものとは思えない。
羅刹が嗤う。嘘を吐くなと。

「斎藤では、こんな事など出来ぬだろう?」
「されたいと、思った事など無い……」

目の前の紅い目が細められた。
淫靡に舌舐めずりをし、そいつは欲を含んだ声音で俺を責める。

「こんなにも悦んでおいて、何を言っている?」
「離、せ……」

自分の声に力が無い。
そんな俺の状態を見越しての事か、更に指が増やされた。小刻みに震わせながらその指が根元まで挿入される。
俺の息が上がるのを見た男は嬉しそうだ。

「さぁ、あんたはどちらをより好いている?」
「さ、いとう、だ……」

併し俺の言葉に、一瞬にして男の表情は冷徹なものへと変貌した。

「斎藤如きで、お前は満足出来るのか?」

然うして俺の中にある指を、ばらばらと広げていきなり激しく動かした。

上がるは嬌声。
逃げようと暴れてみても、きつく縛り付けられた腕が痛むだけだ。

「答えろ、あんたが好きなのはどちらだ?」

こんなもの、俺の答えなどと言えぬではないか――否、この男は屹度、元々こうするつもりで居たのだ。

「素直に言えたのなら、褒美をくれてやろう」

指が抜かれ、男の熱が秘所へと宛がわれた。
再度斎藤が好きだと答えた俺に、男は嗤った。褒美は要らぬのかと、淫らに、妖艶に。
要らぬと言えば、また嗤う。

一刻先には恐らく俺の身体は羅刹に奪われることだろう。
抵抗が無駄であるならばせめて、閉じた目蓋の中でだけでも、愛しい蒼と見詰め合えれば――……



2012.04.12
▼ヒヨ太様に捧げます

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