思捨誤入

「三木君て、案外口づけ魔なんですね」

唇がふやけそうなほど繰り返された口づけに、思わずそう言ってしまった。
そうすれば、少しは自重すると思ったのだけれど。

「あぁそうかもな。でも別に、嫌じゃねぇだろ?」

三木君は口端を上げながらそう言って、再び僕に唇を重ねる。
自重するどころか、口づけの頻度は増すばかりだ。
もちろん嫌ではないけれど、口づけだけで終わらせたくない。そう言ったら、呆れられてしまうだろうか。

「嫌ではありませんが、どうして口づけばかり……」

顔が離された隙に、質問をしてみる。
三木君は意にも介さず、「好きだからな」と言ってまた僕に口づけた。

三木君の言う「好き」は、口づけのことだろうか、それとも僕のことなのだろうか。
聞いてみたかったけれど、答えを知るのが怖くて、結局この日は自分でも呆れるほどの口づけを繰り返してしまった。



拍手ログ@掲載期間
2018.01.21 - 2018.03.31
title/誰花様

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