純情中毒

口付けをしつこいくらいに強請ってくる平助に、分かった分かったしてやるよと言ったら声を上げて喜ばれた。こいつ、こんなに子供だったか?
それから嬉しそうに俺の元へとにじり寄って来た平助は、

「左之さん、これからは俺以外としちゃ駄目なんだからね?」

と無意識なのか、それとも意識的なのか、煌めく瞳を俺に向けたまま小首を傾げてきた。くそ、可愛いじゃねぇか。

「言われなくたって、俺にはお前だけだよ」

そう言ったら嬉しそうな表情のまま照れていた。器用な奴だ。
俺の膝に乗り上げて、左之さんと口付けだぁと浮かれる平助の手が俺の肩に置かれ、直ぐに平助の顔が迫ってくる。
かなり早い段階でぎゅっと目を瞑ったこいつは、あろうことか俺の頬に口付けていた。

ただ押し付けられただけのそれは数秒後に離れ、けれど平助を見れば満足気にへへへと笑っている。
左之さんに口付けしちゃったと目を輝かせているこいつは、俺が思ってる以上に純情なのかもしれない……って、馬鹿なのか、こいつ。
平助の後頭部を引っ掴み、思い切り引き寄せて無理矢理唇を合わせてやった。舌を入れるか迷ったけれど、それはまた別の機会にするかと今は唇の表面を舐めるだけに留めて顔を離す。

「口付けっつーのはこうすんだよ」

余裕ぶった顔で言ってみせると、左之さんのせいで妊娠した! 責任取ってよ! と馬鹿が騒ぎ出した。

「はぁ? この程度でする訳ねぇだろ」
「だって凄い…今の口付け、凄くやらしかった!」

こんなんでいやらしいとか言われてもな……と呆れはしたけれど、騒いでるこいつの顔がやけに幸せそうだったから「ま、責任は取ってやるよ」と言ってもう一度、今度はとびきり甘い口付けをくれてやった。



2016.04.21

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