序奏

この日は三番組と十番組が巡察当番だった。
斎藤率いる三番隊は、最近不逞浪士が出没すると言われている廃屋へ行くよう、命じられていた。恐らくその浪士達は薩摩藩の者達である、というのが副長である土方の考えだ。

「今回は情報収集だけにしておいてくれ」
「お任せ下さい、副長」

斎藤は短い会話で副長の意を汲み取る。いまはまだ問題を起こす時期ではない、ということだろう。血の気の多い左之隊ではなく、自分の隊がこちらを任されたのは、きっとそのためだ。

夕刻、件の廃屋へと向かっている途中で、一人の平隊士が斎藤の元に駆け寄り耳打ちをした。

「斎藤組長、先程あちらに怪しい人影が見えました。廃屋とは別方向ですが、いかが致しますか?」

斎藤は短い逡巡の後、そちらへ行くことにする。副長に頼まれたために素直に向かってはいたが、斎藤は元々廃屋には誰も居ないと踏んでいたからだ。あからさまにそんな怪しい場所を使用するだろうかと。
そこへきて怪しい人影が廃屋と別の場所に向かっていると聞けば、そちらが本命である可能性が高い。

斎藤はその隊士以外の者達に向かって廃屋を見てくるよう命じ、自分達は別の場所へ行くことを告げた。別行動を命じられた隊士達が、見回り後にどこで合流するのかと訊ねると、斎藤は勝手に戻って良いと指示する。
もしも浪士達に見つかった場合、隊員が居ない方が素早く行動が出来ると思ってのことだったのだが、しかしこの判断は間違いであったと、斎藤は暫し後に知ることになる――。


耳打ちをしてきた隊士のみを引き連れ、斎藤は「怪しい人影が見えた」と言われた方向へひた走っていた。闇がどんどんと濃くなる時刻だ、一度見逃してしまっては再度人影を見付け出すのは困難であろう。

「組長、あちらに人影が!」

斎藤は、隊士の指さす方向を見た。なるほど、人影が幾つか見える。路地の奥へと人目を気にしながら入っていく様は、明らかに怪しげであった。

「あの路地裏は、何がある?」

返事を期待していた訳ではなかったのだが、そう訊ねると「薩摩藩の者が出入りしている茶屋があります」という、頼もしい答えが返ってきた。

「あんな奥に茶屋があっても、儲からぬであろう」
「えぇ、ですから専らの噂ですよ。あそこは茶屋の振りをした浪士の溜まり場だと」
「なるほど、打って付けの場所という訳か」

斎藤はここが本命と確信し、その隊士と共に足音を忍ばせ、路地裏の茶屋へと向かって行く。

「組長、どこまで行くんですか?」
「茶屋の前の路地だ、そこに潜み出入りしている者達の顔を確認する」
「彼等はいま入っていったばかりですよ? 一度屯所に戻って、他の隊士を連れて来た方が……」
「戻っている間に出られしまう可能性もある。それに今夜は情報収集だけだ、他の隊士を呼ぶ必要はない」
「……そう仰ると思ってました。一さん、茶屋に気を取られ過ぎて隙だらけですよ」

平隊士の「一さん」という呼び方に違和感を覚え、斎藤は隊士を振り返り――その直後、視界が暗転した。



目覚めた時、斎藤の周りは見知らぬ男達が取り囲んでいた。
状況を確認するために身体を動かそうとして、異変に気付く。自由がきかない。両腕が縛られているらしい。
見慣れた浅葱色の布が少し離れた処に置かれているのを見ると、どうやら隊服は脱がされているようだ。
隊服の下に着ていた着物も肌蹴させられ、腰紐だけがかろうじて身体に付いているような状態であったが、肌を隠すには何の効力も無い。

そして下腹部の違和感と、整わない呼吸。不吉に厭らしく笑って斎藤を覗いている周りの男達に不快感を覚えつつ、下腹部に目を遣ると斎藤自身を知らぬ男が扱いていた。
その状況に朦朧としていた頭が一気に覚醒したが、それでもこの状況を理解することは出来なかった。

一体、何故こんなことに……慌てて周りの男達の顔を見回すと、先程斎藤と共に居た平隊士の顔が見えた。

「貴様っ、何をしている!」

叫んだつもりが、思った程声が出なかった。それに気付いた見知らぬ男が、感じ過ぎて声が出ないのかと言って嗤う。平隊士を含めた周りの男達も、一緒に嘲笑い出した。

「何だとっ」

反論をしようと斎藤自身を扱いている男を睨み付けた途端、男が手の動きを速め、突然の刺激に斎藤は自分の意思とは無関係に声を上げてしまった。元々下卑た笑顔を浮かべていた男達が、その声を聞いて更に笑う。

屈辱的ではあったが、普段から自慰すらしない斎藤にとって他人の手による刺激は強過ぎて、どうしても声が漏れ息が上がってしまう。
嫌なのに、我慢が出来ない。更に屈辱的なことに、斎藤は極まりつつあった。

「うっ……ぁあ、もぅっ!」

男達が哄笑する。斎藤は余りのことに目じりに涙を滲ませ、男の手に欲を放った。
無理だと分かっていても我慢しようと息を詰めてしまっていたことと、解放感による疲労で斎藤はぜいぜいと苦しそうな息をしながら視線をぼんやりと彷徨わせていた。
そんな斎藤を見て、男達は口々に卑猥で屈辱的な言葉を浴びせてくる。

一体、この状況は何なのだ……

またもぼんやりとし始めた思考の中、それでも斎藤は冷静に考えようと努めていた。
あの平隊士が俺を囲む男の中に居るということは……奴は間者だったということか? 何という失態だ、全く気付かなかった。
それにしても解せないのは、捕えておきながら俺を一思いに殺さないことだ。

斎藤は再度平隊士の方を見遣り、何のつもりだと問い質す。問われた平隊士は嬉しそうに笑顔を浮かべ、「僕達は一さんが好きなんです」と意味不明なことを言った。

俺を好き? 何故だ。大体この男共は何なのだ、薩摩藩の者ではないのか?

「どういう、ことだ……」
「嫌だなぁ、こんな単純なことも理解出来ないんですか? 僕達は貴方という男に心を奪われた集団だってことですよ」

そうそう、と周りの男達は同意を示しながら相変わらずにやけ面のままだ。人を馬鹿にしているとしか思えない。

「何を言っている、俺に惚れているという意味が分からん」
「僕、本当は間者として入隊したんですけど、一さんに惚れちゃったんですよねぇ」
「…………」
「だからただ殺すなんて勿体ないじゃないですか。いずれ殺すにしても、楽しんでからじゃないと。僕は一さんと繋がりたいんです」
「何をっ」

言うが早いか平隊士はそれまで斎藤を弄んでいた男と入れ替わり、斎藤自身を扱き始めた。
先程達したばかりのそこはは慣れていないこともあり、酷く敏感になっている。気持ちとは裏腹に直ぐに感じ始めてしまった。

「僕の手、気持ちいいですか?」

隊士の問いにそんなことは無いと言ってやりたいのだが、言葉を発しようとすると喘ぎ声が出てしまいそうで、斎藤には声を抑えるのが精一杯だった。
しかし意地もある。平隊士の扱きの合間にかろうじて、何故自分を殺さないのかと訊ねることは出来た。

「何故って……呆れた人ですね、さっき言ったでしょう? 僕達は一さんに惚れてるんだって。そう、もうめちゃくちゃに犯したいくらいにね」

言いながらちらりと舌を見せた平隊士の顔は、必要以上に恐ろしく見えた。

「もっと気持ち良くしてあげますね」

そう言って平隊士が徐(おもむろ)に斎藤を咥え込んだ。その生温かい感覚に、斎藤の身体が大きく跳ねる。
ねっとりと舐め上げられ、鈴口を執拗に攻められる。斎藤はまた達してしまい、その白濁を飲み込んだ平隊士は「だらしないですね」と斎藤を笑った。

「一さんばかりが気持ちいいなんて不公平ですよね、今度は僕達を気持ち良くして下さいよ」

平隊士は斎藤の髪を掴んで乱暴に顔を上げさせた。立て続けに達かされて力の入らない斎藤は、抵抗も出来ずに平隊士を見上げ――その瞬間、口の中に凄い圧迫を受けた。

「歯なんて立てちゃ駄目ですよ?」

平隊士自身を無理矢理咥えさせられていた。歯を立てるななどと言われずとも、余りの苦しさに口を閉じることすら出来そうになかった。
苦悶している斎藤の顔を満足気に眺めながら、平隊士がゆっくりと腰を動かし始める。口内に塩気のある苦味が広がり、否が応でも平隊士の欲望を感じざるを得ない。

自分をめちゃめちゃに犯したいと、それ程自分に惚れているだの言っていた平隊士の言葉がにわかに真実味を帯びてきて――恐怖が湧き上がった。そんなもの、まるで狂気ではないか。

しかし斎藤の思いなど気にも留めず、平隊士は腰の動きをどんどん早めていく。
斎藤は息をするのもままならず、この苦しさから早く逃れたい余りに思わず舌を動かしてしまった。
ただ少しでも息を吸いたくて取った行動だったのだが、偶然にも平隊士の好い所に舌先が触れてしまったらしい。平隊士は経験があるのかと斎藤に訊ねた。その声は意外そうでもあり、怒っているようでもあった。

問われた所で、その平隊士自身を咥えている斎藤には返事などしようが無い。それが分かっていながら平隊士は尚も斎藤に問い薄く笑った。
斎藤が答えぬのを良いことに、平隊士は周りの男共に「一さんは寂しがっているようだ」と告げた。

その言葉を受け周りの男達は堰を切ったように斎藤に群がった。無遠慮に斎藤の膚に触れて、薄汚い手で弄ぶ。その内の一人が斎藤自身を扱き出した。斎藤はまた熱を持ち始めてしまい、男達は厭らしい顔でその様を眺めている。そしてとうとう誰かが斎藤の秘部に触れた。
未だかつて誰にも触れられたことの無い場所への刺激に、斎藤は思わず仰け反り、その反動で咥えていた平隊士自身を強く吸い込んでしまった。

平隊士もいきなりの刺激に限界がきたらしい。斎藤の名前を二度ほど口にして、腰の動きを急速に早めた。咥内の質量が増したかと思うと、斎藤の喉奥に白濁が放たれる。
全ての欲望が出切る迄斎藤に自身を咥えさせたまま、平隊士は気持ち良さそうに微弱に腰を振り続けていた。

元々息苦しかった上に無理矢理欲望まで飲まされた斎藤は、口から平隊士自身が抜かれるなり咳き込むことになった。ごほごほと咽る度に、飲み切れなかった白い液体が口端から零れていく。
味覚からも嗅覚からも視覚からも、斎藤は自分が凌辱されたのだと思い知らされた。

斎藤の苦しさなど気にも留めず、周りの男達は遠慮容赦無く斎藤の身体を弄ぶ。武骨な男の手によりひたすら上下させられた斎藤自身は、本人の意思に反して男達を喜ばせる形へと変貌していた。
秘部には既に二本の指が挿入されていた。いつの間にされたのだろうか、理解出来ない現実の連続で挿入時の痛みこそ感じなかったが、気付いてしまえば秘部に受けている異物感に意識がいってしまう。

「や、め……」

まともに声が出ない。止めろという短い単語すら今の自分は言えないのか、何と情けないことだろう。悔しくて口端をぎりと噛むと、薄らと鉄の味がした。
平隊士が不思議そうに首を傾げる。どうしたんですかと惚けた声で訊ねる男に、斎藤は酷く苛立った。どうしただと? こんなことをされて、俺が何も感じないと思っているのか。
だが恐らく斎藤が怒ることすら見越しての口調だったのだろう、更に唇を強く噛んだ斎藤を見て平隊士は「やだなぁ、そんな顔をして」と言って可笑しそうに笑った。

「どうせ初めてじゃないくせに」

軽蔑とも取れる視線を向けて平隊士が吐き捨てるように言った。直前までくすくすと笑っていたというのに、この変わりようは何なのだろうか。じわりと斎藤の背筋を冷たいものが走った。
この男は、どこかおかしい。
そう思った所で逃げられる訳ではない。斎藤は近付いてくる平隊士が口端を歪めて笑う顔を、ただ見ているしか出来なかった。

下肢は相変わらず別の男に弄ばれている。息が上がる。直ぐ傍まで来た平隊士に顔を覗き込まれた。
斎藤の熱を帯びた顔に欲情でもしたのか、男は毒々しいまでに赤い舌で己の唇を舐めた。

「今から気持ち良くしてあげますからね」

出された言葉は更に毒々しく、斎藤が何か答える前に男は斎藤の秘部へと指を埋めた。元々別の男の指が既に二本挿入されている、そこに新たな違和感が加わり斎藤は呻いた。
呻く斎藤を見て更に指が増やされる。余りの圧迫に思わず高い声を上げてしまえば、平隊士がまた笑う。

「随分奥まで咥え込んでますね、もう指だけじゃ満足出来ないんじゃないですか?」

返事など出来なかった。震える吐息だけが漏れて、かろうじて殺意を籠めた視線を向けるが、効力など無いに等しい。
平隊士は最初に斎藤に指を入れていた男に離れるよう命じた。言われた男は口惜しそうにしつつも素直に従っている。
一体どういった関係なのだろうか……いや、今はそれどころではない――平隊士は斎藤の足元に回り込むなり、いきなりそそり立った自身の欲望を挿入してきた。

「やめっ……」

言うも空しく最奥まで一気に突き上げられる。そこで平隊士は一旦止まり、斎藤の顔を覗きこんで告げた。

「一さんを見てたら、我慢出来なくなっちゃいました」

そうして斎藤を味わい尽くすように、焦れる程緩慢な動きで平隊士は腰を動かし始める。だがその動きが斎藤には辛かった。
何故この男が勘違いをしたのか分からないが、斎藤は男性経験など一度も無い。初めての圧迫とその感覚に、何も考えられなくなっていく。否、それだけではない。認めたくない感覚が湧き始めてきたのだ。そんな状態になることが、斎藤には辛くて堪らなかった。

自分は新選組として誇りを持っていた。いつ斬られるやもしれぬ世界に身を置き、そのことへの自覚も覚悟もあった筈なのに、今のこの状態は何だ。俺は新選組として相応しくないのではないだろうか……。身体よりも心を斬られるようなこの状況が、斎藤に気が触れそうな程の苦痛を与えた。

しかし身体が、感覚が、己の言うことをきいてくれない。幾度も触られ高められた斎藤自身が、痛い程に反応している。かろうじて声は出さぬようにしているが、それもいつまで続くか分からない状態だ。
そこへきて、先程までは酷く緩やかに動くだけだった平隊士が徐々に斎藤の内部のあらゆる箇所を攻め始めてきたが、それがどうにももどかしい。そこではない、それよりも奥に、もっと別の場所に触れて欲しいなどと認めたくは無いがしかし、堪らず腰が動いてしまった。

慌てて腰を止める。自分の何と浅ましいことか。斎藤は必死になって堪えることに意識を向けた。
喘がず動かず絶対にこんな奴等を喜ばせたりなどしない、そう心に誓ってみたものの、先程斎藤が腰を動かしたことに気付かぬ平隊士ではなかった。

突然平隊士は斎藤の片足を持ち上げ、自分の肩に掛けた。それと同時に一気に斎藤の最奥まで突き上げた。先程自分に課した誓いなど意味を持たず、斎藤は声を上げてしまう。
平隊士は嬉しそうな顔をして、動きを止めてわざわざ問うた。

「ねぇ一さん、この後どうして欲しいですか?」

しかし斎藤は自分の上げてしまった声に衝撃を受け、直ぐに反応が出来ずにいた。自分でも聞いたことの無い声が出ていた。あれは――あれではまるで、悦んでいるようではないか。

「黙っていたら分かりませんよ。それとも、僕と永遠に繋がってたいですか?」

くすくすと笑いながら問いかける隊士に、斎藤はようやく視線を向けた。

「今すぐ抜け……」

掠れた声で命じてみるも、息は上がっていて迫力など皆無だ。

「流石組長ともなると、こんな状況でも冷静なんですね。でも、抜いていいんですか?」

そう言いながら隊士は腰を引き始めた。斎藤から徐々に出ていく隊士自身に、斎藤はもどかしいような痒いような変な気分になりつつあったが、それよりも安堵する気持ちの方が強かった。
隊士が自分の命令を聞き入れてくれたものだと、斎藤は甘い考えを抱いていたのだ。

しかしそれは、これから斎藤が攻められる序章に過ぎなかった。ぎりぎりまで引き抜かれた隊士自身は、抜け切る直前で止まり斎藤の奥を目掛けて一気に突き上げられた。裂けるような声が上がった。最早恥じらいも何も無かった。猛烈な快感を伴う突き上げに、甘い声しか出せなくなった。

隊士は腰の動きを速めていく。喘ぎが意思とは無関係に出続ける。斎藤はそんな自分を受け止めきれず、感情が決壊した。
涙が零れる。少しでも声を上げるのを抑えようと唇を噛締めてみたが、それでもくぐもった声が漏れ出ていた。
下からの衝撃に息が上手く出来ない。苦しくなって唇が解け、結局抑える前よりも激しく喘ぐ結果となってしまった。

そんな斎藤の姿を見て、平隊士のみならず周りにいる男達の目の色も変わっていた。斎藤の声は既に枯れ始めている。それでも容赦無く隊士は攻めてきた。早く解放されたくて、とうとう斎藤は「早く……」と懇願してしまう。
もう終わらせて欲しかった、ただそれだけだったのに――それは、平隊士の琴線に触れた。

まさかこの組長が、冷静で誰にも媚びないこの男が、自分に哀願してくるとは。
もっと長く斎藤を味わいたかったが、予想だにしなかった斎藤の態度に平隊士の限界が来て、斎藤の中に欲を全て吐き出した。
斎藤の耳に平隊士の吐いた熱い溜息が届く。直感した、まだこれで終わりでは無いのだろうと。

けれど続きは平隊士では無かった。最早残滓すら出なくなった隊士自身がずるりと引き抜かれると、今度は周りの男達の動きが変わった。
それまでただ膚を弄ぶだけだった男達は、舌を這わせ、時に噛み付きその白い肌に紅い痕跡を残した。胸の突起は潰されそうな程捏ね繰り回されたかと思えば、別の男がその指ごと口に咥えて水音を立てて吸ってきた。

その内、一人が斎藤の中へと自身を捩じ込んだ。平隊士の吐き出した液でどろどろになっていたそこは、斎藤の意思に反してにすんなり男を受け入れてしまう。
更に自分でも知らなかった部分を攻められ、全身が痺れるような感覚に襲われた。足などがくがくと震えている。
どこもかしこも敏感になっている今、また大きな欲望を埋め込まれ、悔しいけれど感じてしまう。

「ひっ、ぁ、あぁぁぁ」

自分でも信じられない程の声が出た。その声を聞いて「俺はこっちの口で我慢するか」と斎藤の顔に近付いてきた男が、喘いで開いた口の中に男自身を一気に入れる。
塩気のある液が、掠れた喉奥に掛かり息苦しさと違う苦しさを感じる。けれど上も下も同時に激しく攻められて、苦しさを訴えることすら出来なかった。




――――もう、これで何人目になるだろう。

何人分の欲を、自分の中に吐き出されたのだろうか。収まりきらずにだらだらと後ろの口から白い液が流れ出ている姿は、斎藤の希望も空しく男達の欲を更にそそるだけだった。
一体何故、こんなことになったのか……斎藤は、自分が置かれている状態が今でも理解出来なかった。

常人であれば既に何も考えられなくなっているであろうこの状況下でも、三番組組長は早く屯所へ戻らなければと、新選組に報告をしなければと、朦朧とする頭の隅で考えていた。


けれどその意思もそろそろ限界であった。その時、見覚えのある人影が見えた気がしたが、そこで斎藤は意識を失った――――――



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