あいつの幼なじみをやって20年が過ぎたけれど、中々この厄介な想いは消えてくれない。色々あって単身アメリカへ行った大馬鹿野郎は数年して私の前に現れた。

「久しぶりだね。どうした?」
「……少し、休憩をしに」

 疲れたあいつはそれだけ行って私のベッドに倒れ込む。数秒して聞こえた寝息に苛立ちと、少しの切なさに胸が痛くなった。信頼は、されてるんだろう。幼い頃から知ってる友として。私を異性として想っていたらこんな真似しない。
 適当に放り出されたジャケットを手に取る。苦い匂いに眉が寄った。煙草なんて、いつから吸うようになったんだか。ベッドだってあんたの身長がでかいせいでギシギシいってる。壊れたら弁償してくれるんだろうか。

「……苦しいんだよ、バカヤロー」

 少し見なかっただけでこんなに変わるものなんだろうか。服の上からでもわかるくらいに筋肉が育ってるし、顔つきも男っぽくなった。髪も伸びて無駄に色っぽい。
 私だって成長したのに。これから出掛けるところだったから化粧だってしてるのに反応なしとか、ほんと女心わかってない。昔からそうだけど。もっと気使いなさいよ。そうすれば私も——

「は、」

 私も、なに? こいつと付き合えた? もっと女の子らしくアピールできた? 馬鹿馬鹿しい。無理だろう。
 それにこいつに何も望んでなんかいない。何も求めない。アメリカへ行く前にお前は親友だと、そう言ってくれただけで私は満足したのだ。この想いを一生告げないことを決めたのだ。今さら揺らいでどうする。

「っ……ほんと、バカ……」

 大嫌いと言えたらどんなにいいか。関わるなと言える日は来るのだろうか。……来ないだろうな。毎日顔を合わせていたときも、合わせなかったときも、この想いは消えなかったから。かと言ってそれを告げられるかと言えばそうでもないけど。私は一生この男の傍らにいるより、たまに会って馬鹿話ができる親友の方がいい。こいつに恋する私は泣いているけれど、親友の私なら笑えるから。
 どっちがいいかなんて、明白だろう?






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